とてもユニークなこの制度、どのような経緯で導入したのだろうか。担当であるコーポレートカルチャー本部の井上怜副本部長に聞いた。

導入のきっかけを教えてください。

井上怜氏(以下、井上):目的は従業員一人ひとりの生産性を高め、創造性を向上させることにあります。それぞれが掲げるビジョンを実現させるためには、ONとOFFの切り替えをしっかりできる体制が必要と考えていました。そのためには働き方を変える必要がある。

 「金どう」の前には、水曜日を「ノー残業デー」にしていました。ただ、もう一段階の働き方を変えるプロジェクトが必要だと感じたのです。そこで昨年3月頃に「金どう」の案が出て、5月から開始しました。

発案から2カ月後にはもう制度が始まっていることに驚きました。

井上:こうした人事制度を考えるコーポレートカルチャー本部の本部長は、当社の会長CEOが兼務しています。大きな会社ではないこともあり、会長も議論に加わり物事がスムーズに決まっていきました。

月に一度の半ドンとはいえ、制度の導入に社内外から戸惑いの声などはなかったのでしょうか。

井上:社内からはポジティブな声が多かった。ですが、取引先の対応など、社内だけでは解決できない問題もあります。そこに不安を感じていた従業員はいました。

 ですが、営業担当者は2つのチームに分けて、2週目と3週目にずらして「金どう」を実施することで対応できています。開始から1年半を経て、みんな活用の仕方を自分なりに体得している。

休みは増えたが、全体の業務効率は上昇

営業職以外の人など、社内でこの制度によって混乱はなかったのでしょうか。

井上:特にないと思います。現場のトップが「金どう」の週の月曜の朝礼で「今週は『金どう』の週だから、しっかりとエンジン全開でいきましょう!」などとアナウンスし、それぞれリーダーがメンバーに伝えて周知徹底しています。そうすることで、メンバー個人の働き方、動き方が変わってきました。

どのように変わってきたのでしょう。

井上:「金どう」を導入することで、2つの意識が芽生えたと思います。1つは、せっかくの半休をどう活用するかという意識。「来月は何をしようか」と考えるだけでも楽しい。そうなると、仕事にも前向きになってくれるでしょう。もう1つは、それに向けてこの一週間の働き方をどうするかを考える意識。これが芽生え、根付きつつあります。

時間の使い方が変わってきたということですが、月に一度の半休とはいえ、全体的な生産性は落ちていないのでしょうか。

井上:むしろ上がったように感じます。月に一度、ここが半休だと分かっているわけです。それに向けてどう仕事を組み立てて、こなしていくのかを個人で考えるようになる。前倒しで物事を考えられるようになれば、月に一度の半休に向けてだけでなく、日ごろからの業務効率の向上にもつながるからです。

 そして、「金どう」の日に何を実行するか。たかが半休ですが、活用の仕方によって得られる結果は大きく変わってきます。例えば、都心から少し距離のあるアウトレットモールへ買い物に行くとしましょう。土日ですと車が渋滞してしまって丸一日をつぶしてしまうこともある。ですが、平日だと混雑が少なく、やりたいことが半日で終えられる場合が多い。そうすると、次の土曜日を丸一日、別のことに使えるようになる。自分への投資、あるいは家族との団らん時間の創出などに活用できます。これは大きい。

 旅行に行く場合など、土日に比べて宿代や飛行機代が安く済むので、浮いたお金で美味しいものを食べたり、お土産を買ったりすることができる。こうしたプラスがあるからこそ、みんなが積極的に制度を活用しているのだと思います。

「金どう」は強制なのですか?どうしても働かなければならない場合など、振り替えはあるのでしょうか。

井上:「金どう」は強制ではありません。あくまで権利です。午後を休もうが、働こうがそれは個人の自由です。当社は裁量労働制ということもあり、ここで休んだ分をどこか別の日に残業しなければならないということはありません。その代わり、振り替えもないです。会社として制度は用意しますし、それが使われるような仕組みは担保します。ただ、使うかどうかは個人の自由。そこまでをがちがちに固めてしまうと、制度はまた使い勝手が悪くなってしまいます。使わない自由を認めることも重要だと思いますね。


 制度を作っても、使われなければ意味はない。制度がビジネスパーソンにとって大きな負担となっても、本来の目的とかけ離れてしまうことになる。

 そういう意味では、月に一度の週休2.5日はそこまで無理が生じない制度だと記者は感じた。プレミアムフライデー構想はビジネスパーソンにとってプラスに働くかもしれない。ただ、全員が同じ日に休むと、結局お店が混雑したり役所が休んでしまったりするわけで、平日に半休を取ることで得られるメリットが薄くなり、お得感は減ることになる。

 みんなが一律に休むことを国や業界団体が呼びかける方が、制度として浸透はするだろう。だが、企業が受動的な対応をするだけでは、本質的な狙いが従業員に伝わりにくい。制度に魂を吹き込むのはやはり、個社の経営者や幹部の考えと行動力だ。「経産省が推奨するから」「経団連に加盟しているから」ではなく、能動的に、従業員のことを考えて制度を作る方が導入して得られる効果は高くなるだろう。ユナイテッドの事例は、まさにそれを教えてくれている。

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「旧母体であるネットエイジが誕生して、その後IT関連企業を3社吸収合併して2012年に現在の社名に変更した」を
「旧母体であるネットエイジが誕生し、その後合併などを経てモーションビートに社名を変更。同社が2012年にスパイアと合併して現行のユナイテッドへ社名変更した」
に変更いたしました。 [2016/12/02 15:15]