英国とEUの歴史的な交渉がついに1つの節目を迎えた。

 11月25日、欧州連合(EU)はブリュッセルで開いた緊急首脳会議で、英国の2つのEU離脱案を正式に承認した。一つは離脱の条件などを定めた「離脱協定案」で、もう一つは離脱後の通商など将来関係の枠組みを示す「政治宣言案」だ。

 緊急首脳会議の前に報道陣向けに握手を交わしていた英国のメイ首相とEUのユンケル欧州委員長は、別々に記者会見に臨んだ。英国国旗の青色に近い色のスーツに身を包んだメイ首相は、「この合意の下に我々は輝かしい未来に進んでいく」と強調。EUのユンケル欧州委員長は「最善で唯一実現可能な合意だ」と語った。

 2016年6月の英国の国民投票で、EU離脱が決まってから2年以上。離脱の19年3月29日まで残り4カ月と迫り、交渉期限を考えるとギリギリのタイミングだった。英国の議会の承認が得られれば、合意なしでEUから放り出される無秩序離脱は回避される。

EUのユンケル欧州委員長(右)と握手するメイ英首相(左)。緊急首脳会議の当日は、共同で会見を行わなかった(写真:写真:新華社/アフロ)

 歴史的な合意とは裏腹に、英国内では批判が収まる気配がない。交渉という観点からみると、EUの主張が色濃く反映され、「EUの圧勝」(大和総研ロンドンリサーチセンター長の菅野泰夫氏)と言えるからだ。

 最大の懸案は、北アイルランドの国境管理と関税の扱いだ。もともと英国とEUは英領北アイルランドとEU加盟のアイルランドについて、厳重な国境管理を設けないことで合意しているが、その具体策がまとまっていなかった。

 まず離脱協定案では、20年末までの移行期間を設け、その間は従来と同じ単一市場に残留する。その間に合同委員会を設置し、20年7月1日までに移行期間を延長するか否かを決定する。また、20年末までに国境管理の解決策が見いだせなければ、英国全体をEUとの単一の関税領域に残すバックストップ(安全策)を採用した。

 英国はEUから離脱したにもかかわらず、EUのルールに従い続けるうえに、EUのルール作りには参加できず、EU以外の国と自由に貿易協定を結べない。そのため、強硬離脱派からは「半永久的にEUに従い続ける」との強烈な反発の声が強まっている。また、協定案では実質的に国境問題や関税の扱いを先送りしたため、「何の解決にもなっていない」と幅広い層からの反発を招いている。

 さらに英国は、EUを離脱する手切れ金として390億ポンド(5兆6500億円)程度を支払う見込みだ。大衆紙サンはEUへの手切れ金を強調し、メイ首相を売国奴のように描いている。メイ政権への批判は収まる気配がない。

 EUからすると当面、英国との関税の問題が回避される上にEUのルールを適用させることができ、多額の手切れ金を確保できる。英国に有利な離脱となれば、EUから離脱のドミノが起きる恐れがあったため面目を保ったと言える。