米国の次期大統領となるトランプ氏と親交のある日本人は、政界にも経済界にも極めて少ない。だが、トランプ氏とファーストネームで呼び合うほど親しくなった日本人がいる。「大家」と「店子」というビジネス上の関係から親交を深めた、プラン ドゥ シー アメリカ社長の西田康宏氏だ。西田氏に、ビジネスマンとしてのトランプ氏の素顔を聞いた。(構成:大竹剛)
米ニューヨークのトランプ・ワールド・タワーの1階に西田康宏氏が開いた日本食レストラン「MEGU」。写真は2006年のオープニングパーティー。右が西田氏。真ん中は西田氏が所属していた会社、グッドウィル・グループのオーナー、折口雅博氏。(写真:Jamie McCarthy/GettyImages)

 トランプ氏と私は、しばしばファーストネームで呼び合う仲になりました。初めて会ったのは、まだバロン君(大統領選の勝利宣言の時に側にいた、メラニア夫人との間にもうけたトランプ氏の三男)が生まれる前の、今から12年ほど前のことです。それから何年間かは、一緒に食事をしたりする仲でした。日本の情報番組からの出演依頼を取り次いだこともあります。「ヒロのレストランのプロモーションになるのだったら協力するよ」と、出演を快諾してくれました。

 当時、私は2004年にニューヨークのダウンタウンで高級日本食レストラン「MEGU」の1号店をオープンしたのですが、ほどなくしてトランプ氏から連絡がありました。47丁目にあるトランプ・ワールド・タワーの1階に、テナントとして入ってくれないかと。

 トランプタワーはマンハッタンにいくつかありますが、1階にはフレンチなど高級レストランが入っているのが一般的です。ですが、47丁目のトランプタワーでは、テナント探しに苦労していたようでした。2階より上は住居になっているのですが、居住者は1階のテナントはフレンチなどよりもアジアンを望んでいたようで、トランプ氏は当時オープンしたばかりのMEGUの評判を聞きつけて、私に声をかけてきたというわけです。

 トランプ氏は、メラニア夫人など家族と一緒にMEGUに何度も訪れて、私に直接、テナントに入ってくれないか、と頼んできました。一般的にトランプタワーのテナントになるには保証金がかなりかかるので、躊躇しました。それでも、トランプ氏は居住者のためにも、何としてでも話をまとめようと考えていたようです。トップダウンで保証金を大幅に引き下げてくれたので、私も出店を決めました。

 不動産王のトランプ氏が、私のようなレストランの経営者、しかも当時1店舗しか持っていない日本人経営者と直接交渉をしてくれて、しかも、テナントとして獲得するために破格の条件を提示してくるなんて、なかなか考えられないことです。通常であれば、双方ともにブローカーにまかせてやるような交渉なのに、トランプ氏自ら交渉の前面に立つということに、大変驚いた記憶があります。

 今振り返れば、それが、トランプ流のビジネスのやり方だったのでしょう。目標を定めたら、相手が望む条件は何かを即座に理解し、トップダウンで直接交渉相手と対話をしながら、話をまとめていく。一度、近い関係を築くと、相手をまるで家族のように大切にし、ユーモアもある。

 きっと、今回の選挙も、そうやって戦ってきたのだと思います。汗水流してくれた人を裏切らず、自分の直感や信頼関係を大事にする。ご自身も何回か会社を倒産させた経験があるので、身近な人の意見を慎重に聞くのではないでしょうか。