マイアミを含むフロリダ半島南東部や南部はフロリダの中でも共和党と民主党が拮抗していた下院選挙区だが、両選挙区ともに民主党が競り勝った。最終的な投票率を見る必要があるが、若者票が民主党に流れたことが民主党勝利の要因のひとつだろう。

 2000年以降に成人したジェネレーションZやそのひとつ上のミレニアル世代は無党派が多く、投票率の低さが指摘されてきた。だが、フロリダ半島の南端東にあるマイアミ・デイド郡では11月4日の時点で30歳以下の期日前投票が2014年の3倍を越えた。選挙当日の朝に訪ねた投票所も半分くらいは30歳以下と思われる若者が占めていた。

 「政党名で投票したことはないが、今回は民主党に入れた。米国と世界にはオープンマインドな民主党が必要だと思ったから」

 投票所から出てきたミレニアルの男性がこう語ったように、話を聞いた有権者の多くはトランプ政権の政策や政権運営に不満を表明している。

 そして、怒れる女性も反トランプで立ち上がった。

 今回の中間選挙で焦点になっていたのは大都市の郊外に住む有権者の動向だ。環境に優れた大都市郊外は大企業の社員や弁護士、医者など高学歴、高収入の住民が多く、トランプ政権に不満を持つ層が少なからずいる。とりわけ高学歴の白人女性の中には不倫をカネでもみ消し、女性軽視の発言を続けるトランプ大統領に対する嫌悪感が強い。

 象徴的な選挙区と見られたのが首都ワシントンDCの北西に広がるバージニア10区だった。共和党が議席を押さえているが、大卒女性が多く、2016年の大統領選ではトランプ大統領よりも民主党のヒラリー・クリントン候補が票を多く獲得したエリアだ。

 この選挙区と同様に、共和党が再選を狙う選挙区だが大卒女性が多く、大統領選ではクリントン氏が勝った選挙区はカリフォルニアやコロラド、カンザス、テキサスなど全米で10選挙区あった。

 選挙分析に定評のある米クック・ポリティカル・レポートのデイビッド・ワッサーマン氏は、民主党が下院を奪還するには10選挙区中7つを民主党が取る必要があると分析していた。民主党が8議席を獲得したところを見ると、「怒れる女性票」が民主党の下院奪取を後押ししたことは間違いない。

郊外の女性票が注目を集めたバージニア10区は民主党候補が共和党現職を破った(AP/アフロ)
郊外の女性票が注目を集めたバージニア10区は民主党候補が共和党現職を破った(AP/アフロ)

ジェンダーによる分断が進む可能性も

 国境、若者、女性ーー。3つの視点で中間選挙を振り返ると、ほぼ民主党の想定通りに事態は動いていたように見える。それでも、民主党の「青い波」はトランプ大統領と共和党を粉砕するところまではいかなかった。

 その理由として、共和党に有利になるように実施された区割り変更や人口に比例していない上院定数の問題はあるだろう。ただ、有権者の多くがトランプ政権の経済運営や足元の経済情勢に満足しているという点も大きい。

 米国人が政権を評価する際のポイントは今も昔も経済である。大統領が品行方正であるに越したことはないが、それ以上に重要なのは経済を上向かせ、賃金や雇用を改善するかどうか。その点、足元の経済情勢は絶好調だ。好況期の減税が必要だったかどうかはともかく、トランプ政権が減税や規制緩和で経済を浮揚させた結果である。

 もう一つは、最高裁判事の指名を巡る与野党の対立だ。学生の時の性的暴行疑惑が浮上したカバノー氏の指名を巡り、米国は大揺れに揺れた。権力を持つ男性によるセクハラや性被害を告発する#MeToo運動の流れもあり、カバノー氏の強行指名は女性票が民主党に流れる要因になった。

 一方で、#MeToo運動以降のセクハラやパワハラ追及を男性優位の社会に対する挑戦と捉える向きもある。上院公聴会で批判の矢面に立たされたカバノー氏に同情する男性は学歴にかかわらずおり、共和党支持者や共和党寄りの無党派層を投票所に向かわせた可能性が高い。

 トランプ大統領は2016年の大統領選の際に、低学歴の白人労働者という「忘れられた人々」を糾合して大統領の座を手にした。それに対して、今回の中間選挙でトランプ大統領の対立軸に浮上したのは高学歴の女性という対になるグループである。そして、高学歴の男性は共和党の支持基盤だったが、今では浮動票になっている。

 2年後を予想することは不可能だが、2020年の大統領選は学歴と人種、居住エリアに加えて、ジェンダーがより深く米国を分断するのではないか。その先の世界がどうなっているのかはもはや想像もできない。