11月6日に米国で中間選挙が実施された。その結果は戦前の予想通り、共和党が上院の過半数を死守する一方、民主党が下院の過半数218を上回る議席を獲得した。民主党は2010年以来、8年ぶりの下院奪還である。
就任1期目の中間選挙はそれまでの政権運営に対する通信簿といわれる。しかも、今回はトランプ大統領が選挙の前面に出たこともあり、トランプ大統領に対する信任投票という色彩が強く出た。その中で共和党が下院を落としたという事実は、民意が政権運営の軌道修正を求めていることを意味する。
もっとも、負けは負けに違いないが、思ったほど共和党が負けなかったというのが率直な印象だ。

よく言われるように、就任1期目の中間選挙は大統領の所属政党が議席を失うケースが多い。トルーマン元大統領の1期目の中間選挙(1946年)以降を見ると、与党は平均で約28議席を失っている。今回、共和党が失った下院の議席数はほぼ平均と同じ。逆に上院では議席を積み増した。少なくとも、2010年のオバマ政権の時のような惨敗ではない。
反トランプのムーブメントは間違いなく盛り上がっていた。メキシコとの国境エリアは典型だ。
「国境と言えば、不法移民やドラッグカルテルの話ばかり。ここで少しでも過ごせば、それがすべてではないということはすぐに分かるのに」
アリゾナ州南部の国境都市、ノガレスに本拠を置く非営利組織、をBorder Youth Tennis Exchange(BYTE)のチャーリー・カトラー代表がそう憤るように、国境をことさら悪役に仕立てるトランプ大統領のやり方に怒りを感じている人間がこの国境のコミュニティには数多くいる。
米国とメキシコの国境線が確定する以前から存在していたため、ノガレスは米国とメキシコの両側に町が広がっている。人口構成はヒスパニックが多数派で、メキシコ側のノガレスに家族や親戚が住むという住民も少なくない。通勤や通学、買い物などのために日常的に国境を行き来しており、国こそ違えどほとんどひとつのコミュニティだ。
それだけに、国境の危険なイメージをあおり、移民を敵視するトランプ大統領の言動は自分たちへの侮辱。今回の中間選挙では、カリフォルニアからテキサスまで国境沿いの下院選挙区は軒並み民主党が圧勝した。もともと南部国境エリアはリベラルな土地柄だが、トランプ政権への怒りは多くの住民が投票所に向かう原動力になった。
トランプ大統領に対するもう一つの批判票とされる若者票も動いた。
「若者がどちらに投票するかがフロリダを決めるかもしれない」
選挙前の11月5日、フロリダの選挙事情に精通したフロリダ国際大学のキャサリン・デパロ教授(米政治)はこう予言した。フロリダ州は毎回、選挙で政党支持が割れる全米屈指の激戦州。2000年のジョージ・W・ブッシュ元大統領と民主党のアル・ゴア候補の勝敗が最後の最後までもつれたのもフロリダの票だった。実際、フロリダの選挙戦はその通りの展開になった。
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