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タイミングを左右するTPP11と政治状況

 そのタイミングを判断するうえで大事なのは、米国抜きの環太平洋経済連携協定(TPP11)と米国内の政治状況だ。

 TPP11については、トランプ政権のうちは米国がTPPに戻ってくることは期待できないが、少なくとも将来、米国が戻る受け皿は用意しておくべきだろう。そのTPP11は今週開かれるアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議の際に、大筋合意を目指して今、胸突き八丁に差し掛かっている。ここで、これを主導する日本自身が日米FTA交渉に入るとなると、TPP11の交渉に水を差し、一挙に求心力を失いかねない。

 一方、米国はTPPから撤退しても、日米二国間交渉を確保できるならば、米国としても日本が主導するTPP11の努力を邪魔しないということだろう。それが2月の日米首脳会談時の共同声明の読み方だ。TPP11が胸突き八丁のこの段階で明示的に求めない理由はここにある。

 また米国も正式のFTA交渉となると、米国議会の承認が必要となる。現在税制改正で議会との厳しい駆け引きの真っ最中で、通商問題はそれが終わってからだ。そして来年秋には中間選挙を控えている。TPP11が仮に大筋合意になれば、取り残された米国の畜産業界や産業界の不満の声も大きくなり、中間選挙前にはこれを受け止めた動きも必要となろう。

米国の交渉体制から楽観視するのは危険

 一部識者の中には、米国は北米自由貿易協定(NAFTA)や米韓FTAの見直しを優先しているので、交渉体制が整っておらず、日本とのFTA交渉の要求をしてくる可能性は低いと見る向きもある。

 しかし、これは交渉実態を知らない表面的な見方だ。恐らく日米FTAに慎重な人たちの希望的見立てだろう。

 人間は見たいようにしか見ないものだ。

 包括的な協定ではなく、個別案件の寄せ集めならば、それほどの労力を要せず、USTRの少人数集団でも対応可能だ。

 今回の首脳会談でも、「今後具体的協議は麻生副総理、ペンス副大統領による日米経済対話での協議に委ねる」とされた。従って米側はそこで個別問題を持ち出し続けるだろう。それ自体が実質的には日米FTA交渉だと見ることができる。