LIXILグループ創業家の潮田洋一郎取締役会議長が11月1日付で会長兼CEOに就いた。藤森義明氏、瀬戸欣哉氏という2人のプロ経営者から創業家に大政奉還した格好だ。だが、潮田氏のトップ復帰の背後には、瀬戸氏を事実上の“解任”に追い込む不可解な動きがあった。

 プロ経営者、瀬戸欣哉氏の“解任劇”は突然のことだった。
 10月27日。LIXILグループ社長兼CEO(最高経営責任者、当時)の瀬戸氏にかかってきた1本の電話。「これまで話してきた通り、自分がやりたいので辞めてほしい」。こう告げたのはLIXILグループの創業家で同社取締役会議長の潮田洋一郎氏だった。3年ほど前、瀬戸氏を招いた張本人である。

瀬戸欣哉氏にとってもあまりにも突然の“解任劇”だった(写真:北山 宏一)
瀬戸欣哉氏にとってもあまりにも突然の“解任劇”だった(写真:北山 宏一)

 瀬戸氏はかねて「プロ経営者として頼まれてここに来た。席を譲れと言われれば譲る」と公言してきた。だが、あまりにも突然の潮田氏の申し出に「約束は守るが、こんなタイミングで辞めれば混乱は見えている。上半期の業績は悪かったが10月から業績は回復しており、区切りのいいところまでやらせてほしい。今辞めるのは無責任だ」と答えた。それでも最後は「指名委員会の総意なので」と押し切られた。

 その4日後。LIXILグループは11月1日付で潮田氏の会長兼CEO就任と、マッキンゼー出身で指名委員会の委員長を務めていた山梨広一氏がCOO(最高執行責任者)に就く人事を発表した。CEO職を解かれた瀬戸氏は来年3月末で社長職も退く。

辞意を表明していないのに……

 瀬戸氏の解任と後任の指名は、「指名委員会で全会一致で決まった」と潮田氏は主張する。同委員会は潮田氏、山梨氏、前英国経営者協会会長のバーバラ・ジャッジ氏、元警察庁長官の吉村博人氏、作家の幸田真音氏の5人がメンバー。複数の関係者によれば、10月26日に緊急で招集された指名委員は「瀬戸氏から辞意の申し出があった」と説明を受けたという。だが、瀬戸氏は潮田氏からの電話以前に、自ら辞意を表明したことはない。

 今回の人事を決議した10月31日の取締役会では、瀬戸氏が辞めるからという理由で指名委員会が招集され、突然、後任を指名することになったと経緯を打ち明けた指名委員がいたという。十分な判断材料が示されないまま、瀬戸氏の退任と後任人事案の承認を迫られたことに対し、慎重に議論すべきとの意見もあった。そもそも、指名委員会5人の中から瀬戸氏の後任2人を選ぶことを、ガバナンス(企業統治)の観点から疑問視する声も上がった。この人事はあまりにも不可解。そう見る関係者は少なからずいたのだ。

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