ソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏は5日開いた2018年4~9月期決算会見で、政府が主導する携帯電話料金の引き下げ議論について「真摯に受け止めながらしっかりと対応していきたい」としたが、具体的な値下げ策については明言しなかった。

国内の携帯電話料金を巡っては、菅義偉官房長官が今年8月の講演で「4割程度値下げの余地がある」と指摘。その後も料金の高止まりを問題視する発言を繰り返し、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクに大幅値下げを求める姿勢を鮮明にしていた。こうした中、NTTドコモの吉澤和弘社長が10月31日に「19年4月にも現行から2~4割引き下げる」と表明する一方、KDDIの高橋誠社長は11月1日に「昨年夏に導入した料金プランで(政府が求める値下げ問題の)宿題はドコモより先に済ませている」と発言し、ドコモの新施策に合わせて値下げすることを否定。大手の対応が分かれていた。
ソフトバンクグループは、年内にも国内通信子会社であるソフトバンクの株式を上場する計画だ。政府が求める大幅値下げに踏み切れば、そのソフトバンクの収益悪化につながりかねない。孫氏は「しっかりと顧客還元を行っていきたい。合わせて増益にも努めていく」とも発言しており、上場への影響を少しでも抑えたい思惑があるとみられる。
同日の決算会見で孫氏は、サウジアラビア政府などと設立した投資規模約10兆円の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」について、「この資金はサウジアラビア国民にとって大切な『石油のみに頼らない経済の多様化』という責務を負ったものだ。悲惨な事件があったことは事実だが、我々はその責務を果たすべきだと思っている」と述べ、サウジ政府との関係を継続していく姿勢を明確にした。サウジのジャーナリスト殺害事件に同国政府や孫氏との蜜月関係を通じてSVFの後ろ盾となっていたムハンマド皇太子の関与が取りざたされ、孫氏がどう発言するか注目が集まっていた。
2017年5月に設立したSVFはソフトバンクグループの成長の柱となっているが、今年10月、サウジ政府に批判的だったジャマル・カショギ氏がトルコのサウジ総領事館内で殺害される事件が発生。国際的な批判の高まりを受けて、孫氏はサウジの首都リヤドで10月25日(現地時間)まで開催されていた国際投資会議への出席を見送ったが、サウジを訪問して政府高官と面談したことも明らかにした。
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