元徴用工が新日本製鉄(現・新日鉄住金)を相手に起こした損害賠償請求訴訟で、同社に賠償を命じる判決を韓国大法院が確定した(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

 韓国大法院(最高裁)は10月30日、韓国の元徴用工4人が新日本製鉄(現・新日鉄住金)を相手に起こした損害賠償請求訴訟の再上告審で、4人にそれぞれ1億ウォン(約1000万円)を賠償するように命じる判決を確定した。

 判決後、新日鉄住金と日本政府はこの問題は65年の「日韓請求権ならびに経済協力協定」(略称)で解決済みであり、本判決は極めて遺憾であるとのコメントを表明した。今後の韓国政府の対応次第では、日韓関係に深刻な影響を及ぼす可能性がある。

盧武鉉政権の見解を覆す

 日本政府・企業にとって衝撃的な判決となった。というのは、「日韓請求権並びに経済協力協定」の規定に反するだけでなく、従来の韓国政府の見解とも異なるからである。

 65年に、日本と韓国との間で「日韓基本条約」(略称)、「日韓請求権並びに経済協力協定」などが締結され、国交が正常化した。正常化のネックとなっていた請求権問題については、日本が韓国に経済協力することで「政治的決着」が図られた。この背景に、当時の朴正煕(パク・チョンヒ)政権側に、日本から資金供与を受けて経済建設を推進したかったことがある。

 具体的な内容をみると、同協定の第1条で、日本が韓国に対して、3億ドルの無償供与、2億ドルの低利融資、3億ドルの商業借款を供与すること、第2条で、「両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、…(中略)…完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」と規定された。

 日本政府はこの規定を拠り所に、個人の請求権問題は「解決済み」との立場をとっている。同様に、韓国政府もこの協定で解決ずみとの見解を示してきた。盧武鉉政権(ノ・ムヒョン、文在寅=ムン・ジェイン=大統領は当時秘書室長)も、日本政府が同協定に基づき供与した無償3億ドルのなかに請求権問題を解決する資金が含まれているとの見解を示した。

 今回の裁判でも、一審、二審は基本的に政府と同様の見解を示したが、12年5月に大法院が個人の請求権は消滅していないとの判断を示して、二審判決を破棄した。13年7月の差し戻し控訴審で高裁は、新日鉄住金に対して1人当たり1億ウォンの支払いを命じる判決を下した。新日鉄住金はこれを不服として上告。この後、5年間審理が行われなかった。

 そして10月30日、大法院が新日鉄住金の上告を棄却し、判決が確定した。