まずは社会への価値提供の確立

 今回の保育園事業立ち上げのきっかけとなったのが、2015年4月に立ち上げた会社の未来を考える専門部署「未来創造局」だ。2015年6~9月に全国6300名の社員に、今の資生堂の課題や、資生堂でやってみたいことをヒアリングした「未来創造マラソン」の結果、保育園の事業化検討を開始した。今回の保育園開設に当たっては、昨年から1年かけて70カ所の保育園や研究施設、保育士へのヒアリングを行ったという。

 魚谷社長は、当該事業に関する売り上げ目標等に関しては、具体的な言及を避けた。「社会への価値創造なくして、企業価値を向上することはできない。当然CSRに留めるつもりはないし、適切な収入を得られるようにするつもりだが、まずは子供の成長にかかわる極めて重要なものとして、社会に価値を提供できるかどうかを考えていきたい」とした。

 JPホールディングスというプロの手を借りるといえど、課題は少なくない。そもそも企業内保育所に関しては、働く母親側からはストレスと受け止められるケースもある。保育園不足に陥っているのは都心で、都心で働く女性が、通勤ラッシュの中、子供を会社にまで連れて行くこと自体がストレスになるためだ。自宅の近くに預けられることがベストで、企業内に保育所があることが必ずしも母親にとって良策になるとは限らない。資生堂は、まずは郊外の研究所施設や工場をメインに開設していくというが、それでは保育所不足に悩んでいる都心部に住む母親の“痛み”を完全に取り除くことはできない。

 もっとも資生堂もそれは理解した上だ。都心では保育園を新たに開設するスペースが少ないため、まずは企業内の遊休スペースなどを利活用して取り組んでいくという。「まずは量を増やすことから始めたい。企業に対する働きかけによりムーブメントを作っていく中で、変化や前進が生まれてくるはず」(小林氏)と、まずは自分たちの手を動かして事業を推進することを決めた格好だ。