「もう一歩踏み込んでやってみよう」

 11月1日に都内で行われた記者会見で、資生堂の魚谷雅彦社長は、待機児童増加、それを引き起こしている保育園不足について強い懸念を示すとともに、「もう一歩、企業として踏み出す必要があるのではないかと感じていた」と資生堂が保育園事業に取り組む意義を明らかにした。

資生堂が保育園事業に参入する意義を語る魚谷社長
資生堂が保育園事業に参入する意義を語る魚谷社長

 「企業の経営者と話していると、女性の社内におけるキャリアパス設計のみならず、チャレンジさせたくても保育園などの環境が整わない、という課題を聞くことが増えた。女性活躍を推進している企業として、我々が相談役になり、手を動かすことで、事態を少しでも好転させられるのではないかと思った」(魚谷社長)と参入の理由を語る。

 今年3月に厚生労働省が発表した資料によれば、2015年の4月時点での待機児童数は2万3167人。6年連続2万人を超えている状況だ。

 資生堂は化粧品の売り上げが大半を占めるが、2014年4月に就任した魚谷社長は、兼ねて「資生堂は化粧品の会社ではない。飽くまで、女性が美しくいられるための生活文化の創造をミッションとする」と言い続けてきた。今回の記者会見でも、改めてそのミッションを提示するとともに、ミッションを遂行するためには、「社内の環境整備」「経営者とともにムーブメントを作ること」「社会へのコミットメント」が必要であることを強調した。

 特に、社内の環境整備では、子供を持つ美容部員の働き方を見直したことで昨年大きな注目を浴びたことにも触れた。資生堂では、2014年4月から、子供を持つ美容部員に対して、できる範囲で土日出勤や定時出勤を求めた。子供を持たない従業員と、持つ従業員の間に生まれた経験値の差や不平等感を見直すためだった。「このときに改めて、もっと積極的に働く女性をサポートするんだ、ということを資生堂自身が発信すべきと思った」と魚谷社長は語った。

 女性に寄り添う企業であることを標榜している資生堂として、働く女性の喫緊の問題である保育園不足は、取り組むべき必然性があったともいえるだろう。

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