ここ数年で、多くの日本企業が一斉に導入した社外取締役。だが、果たして本当に機能しているのだろうか。未だに半信半疑という経営者も少なくないのが現状だ。こうした状況において、気鋭の経営学者2人が、約60人の社外取締役に直接ヒアリングするという、国内で類を見ない大規模調査を実施した。シンガポール経営大学ビジネススクールの好川透教授と、大阪市立大学大学院経営学研究科の山田仁一郎教授だ。調査の結果見えてきた、日本企業の社外取締役活用における課題と将来の方向性とは。

一部上場企業の80パーセントが2名以上の社外取締役を導入

 2015年にコーポレートガバナンス・コードが導入されてから、日本企業の社外取締役の数は急増した。今では東京証券取引所の一部上場企業の80パーセントが2名以上の社外取締役を導入している。この動きは一般的にはポジティブに捉えられているものの、現状をより詳細に見るといくつかの課題があることがわかる。

 社外取締役の増加は、必然的にその地位につく人のバックグランドの多様性をもたらしている。以前から弁護士や著名な大学教授などが社外取締役になっていた。最近では、これらの職業に加え金融機関やコンサルタント会社出身者、現経営者・役員や元経営者・役員、さらに職業に関わりなく女性識者、それにビジネスの実務経験がない人の就任も増えている。急に多数の社外取締役が任命されるようになったため、このような動きは当然と言えるかもしれない。

「取締役員会でいかに行動し、貢献すべきか」の認識に違い

 著者たちはコーポレートガバナンス・コードが導入された直後の2015年10月から日本における社外取締役の現状についての研究調査を始めた。これまで約60名の社外取締役の協力を得て直接話を聞いてきた結果、この多様性がもたらす現状と課題が見えてきた。

 明確になったことのひとつは、新しく社外取締役に就任した人のあいだで、「取締役員会でどう行動し、いかに貢献すべきか」という役割の認識に、大きな違いがあることである。この違いは例えば、その社外取締役本人と社長との距離感や、社長との理想の関係についての考え方、執行と監督の境界に関する感覚の違いに現れている。

 社長との距離感について言えば、社外取締役が独立性を保つにはある程度距離があった方がよいと言える。しかし、あまりに心理的に距離がある場合は社長との間に信頼関係が築きにくくなり、社外取締役の仕事にも悪影響が出る可能性がある。例えば、重要でセンシティブな情報を経営陣が社外取締役と共有してくれないようなことも起こりうる。一方、社長と信頼関係がある場合は厳しい意見も言いやすく、社長もそのような意見を受け入れやすい。