異なる専門性を持った人を組み合わせて任命

 複数(3名以上)の社外取締役が存在する取締役会では、取締役のスキル・ポートフォリオの観点から、様々な経営課題に関する助言や経営サポートを期待しているようである。このような場合、違う専門性を持った人(例えば企業経営経験者、弁護士、学者など)を組み合わせて任命している。例えば、次のような例がこれにあたる。

L.:当社のCEOが偉いのは、とにかく常に社外役員もチームなんだとしている点です。彼は、常に社外役員の技能と特性の組み合わせ、スキルのポートフォリオを考えているわけです。この人とこの人の組み合わせであれば、これらが足りないとかを考えているがゆえに、社外役員も含めた経営チームがつくられていきます。(元経営コンサルタント)

 また、まだ数は非常に少ないが、社外取締役が戦略的意思決定の監督や、経営者交代に積極的に関わる役割を果たす企業も出てきている。このようなパターンを下の<■表1>に示した。社外取締役を導入している会社は大きく増えたが、表の最上段のパターンの会社もまだたくさんあるのではないだろうか。ただし、複数の異なるバックグラウンドをもつ社外取締役が有効に機能しない場合もあるため、複数いればよいということでもない。例えば、次のようにうまく機能していないケースもあるようだ。

M.:(社外取締役が)4人いる会社があって、結構大きな会社なのです。そこは完全に2人対2人に分かれてしまい、2人がいわゆる官庁天下りの方なのですね。1人が大学の先生で、1人がいわゆる実務家なのですが、やはり実務家の方が非常に困ってらっしゃいましたね。4人で共闘すれば結構いろんなこと言えるのだけれども、決してその話に官庁の方が乗ってこないと。一方、大学の先生はなんかとても大事なことだなっては思っているのだけど、実務経験がないので分からない。なので、結局1人浮いちゃって。(元金融機関)

社外取締役の導入形態と効果への期待を整理する

 社外取締役の証言は、これまで見てきたように多様性に富むものだ。ただ、分析していくと、企業における社外取締役の導入形態と効果への期待は、概ね以下のように整理できる。

■表1:社外取締役導入の形態
社外取締役の導入と効果に懐疑的 形式的な社外取締役の導入
(社外2名以下)
社外取締役の効果を試す姿勢 外部の観点から経営陣に新たな課題や気づきをもたらす
(社外2-3名)
社外取締役の“活用”に積極的 社外取締役ポートフォリオの観点から様々な専門知識に基づく経営サポートと助言を求める
(社外3名以上)
社外取締役が中心の取締役会を上部監督機関と位置づけ 社外取締役が主要サブグループとして戦略的決定を監視し経営者交代にも関わる
(社外半数以上)

 ここで注意したいのは、この表で下にあるほど社外取締役を正しく使っている、ということではないことである。社外取締役の役割と貢献の仕方は企業の形態(例えば家族企業、高度に多角化した企業、グローバルな企業)によって異なる。例えば、高度に事業を多角化した企業では、様々な専門知識をもつ複数の社外取締役のアドバイスや監督が有効かもしれない。一方、社外取締役を入れた経験が浅い企業や同族経営者が長年経営してきた企業などは、外部の視点から気づかされるだけでも有意義であろう。

 今後、企業戦略の変化、事業ポートフォリオの変化や経営者のガバナンス経験値の蓄積によって、社外取締役の役割や貢献の仕方も変わってくると思われる。さらに、日本における社外取締役に対する期待も時間を経てもう少し収斂(しゅうれん)していく可能性もある。その収斂の方向がアメリカ型の、株主に代わって経営者を監視する、というものになるかどうかはまだわからないが、社外取締役の効果に関する認識が、その方向に影響を与えるのではなかろうか。

 コーポレートガバナンス・コードにコンプライする日本企業は増加傾向を辿っている。しかし形式的なだけのコンプライについて、株主や投資家からの視線は厳しい。同時に、経営層と社外取締役のやり取りの実態からは、現在の経営環境からの圧力に従いながらもそれぞれ悩み、模索する様相が浮かび上がる。これから企業の価値が経営層の意思決定で決まる割合は、高まるであろう。特に、経営者を選び、据えるガバナンスの可視性は、もっと高まっていく。社外取締役の役割は、経営環境と経営層の間のインターフェースとなっていくかもしれない。