社長との距離感が影響

 さらに日本企業では多くの場合、社長が実質的に社外取締役を選んでいるようである。このことが、社長との距離感や、自分の役割に関する認識に影響を与えているとみられる。もし自分が社長の強い意向によって選任されたと理解していたら、社外取締役の社長に対する距離感や態度は、そうでない場合と比べると異なるであろう。社外取締役が社長のために働いているのか、当該企業のために働いているのかの区別が明確なケースとそうでないケースが見られたことは、このことを間接的に示しているといえる。

 例えば、就任時の役割の理解が様々であるという現状について、バックグラウンドがそれぞれ異なる社外取締役の方々は次のような説明をしていた。

G.:全くまっさら同士が株主総会のときに初めて会うっていうケースもあるんですよ。つまり、人材派遣の会社が間にいたりすると、何回か面接して「よろしければ」みたいな話になったりするじゃないですか。しかし面接っていっても本当に1時間ぐらい、役員の人の2、3人とお話してそれで決まっちゃうとかっていう場合だと、その会社に行くのも初めてだし、その会社の役員の方と大勢の方と面通しするのも初めてだし。誰も知らないという状態で初めて株主総会に行って、今日から社外取締役ですって方も結構いらっしゃるんですね。(元金融機関)

H.:社外役員というのは、社内の論理が世間一般とずれないようにするというのが1つの役割だと思うのですね。もうちょっと会社法的に言えば、ほかの取締役とともに執行を監督しているということで、会社の方向性が間違いないように、あるいはその利益が出るように、ガバナンスはプラスのガバナンス、攻めと守りと、何か私には十分によく分からないのですけど、とにかく利益を出して、社会に対して問題を起こさないようにということですよね。(元官僚)

I.:今思うと、当時の取締役会というのはまだまだ小さい会社でしたし、取締役会で何か議論をして方向性を決めていくというよりは「教育の場」だった気がしますね。取締役の社長が一緒に取締役を教育する場、というような印象で私はいつも見ていました。(公認会計士)

社外取締役の“活用”の仕方は様々

 このように自らの役割認識に違いが見られるものの、社外取締役の存在は会社の最高意思決定プロセスに何らかの変化はもたらしているようである。ただし、会社によって社外取締役の導入あるいは“活用”の仕方は様々で、いくつかのパターンが見られる。

 取締役会の役員のほとんどが内部者であった日本企業では、外部者の視点から経営者に“気づき”をもたらす、という役割を社外取締役に期待しているケースが多い。社外取締役の多くもこの役割を強く認識しているようだ。

J.:一人、その社外取締役になっている人が質問とか意見を言うと、何か刺激されてほかの社外役員や、OBの人とかも、独立じゃない人とかも、皆しゃべりだすのです。そうすると、今まで(会社側が)そんなこと言われるとは思わなかったっていったことが、二回ほどありましたかね。結論はもちろん変わらないのですけど、ああそういう見方もあるのかと。社内の会議では質問も意見も出なかったって言われて、代表取締役が情けないと言われたことはありました。(弁護士)

K.:経営陣の評価とか、経営陣の選任という機能というのはものすごく重要になるわけですね。最後の砦です。それは経営陣にとってみても、極めて緊張感を与えるものになりますので、社外役員の意見に対する感度・意識というのはさらに高まるということが期待されるわけです。当然、社外役員はその権利というのを乱用することはあってはいけないわけですけども、株主利益の観点から、やはり経営陣の交代も含めて行動しなければいけないというふうに、私は思っています。(元経営コンサルタント)