社外取締役は具体的にどう考えている?

 このような個々の社外取締役における認識の違いを示す例として、次のような感想があった。

A.:コンスタントに企業価値を高めていくというプロセスが(取締役会で)求められました。A社は、ご承知のようにオペレーティング(執行業務)をやる取締役会ですので、かなり戦略的なことが取締役会の議題に入ってきます。本当に厳密に分けた場合の執行と監督という形からすれば、執行に近い意思決定そのものに社外取締役の関与と役割があります。(元経営者)

B.:(社外取締役に)ご依頼いただくのはやっぱりチェンジ・エージェント(変革者)の役割ですね。またはカタリスト(変化の触媒)です。もともとコンサルティング会社出身の人間はカタリストだし、チェンジ・エージェントの役割を期待されて社外取締役を依頼されることには、違和感はありません。(元経営コンサルタント)

C.:ちょっと昔までは社外取締役にアドバイザー機能を求められた時もありますが、(最近は)「そんなアドバイザーじゃ駄目だ、監督が重要だ」と言っていて、「監督の中からアドバイザー機能、アドバイス機能を完全に捨象するべきだ」という議論も日本ではあるんですよね。けれども、実際に重要な意思決定を行う際には、それに対する監督とアドバイスは裏表一体だと思うんです。(元証券会社)

 このような違いは社外取締役個々人の経験の違いだけでなく、社外取締役に期待されていることが、社会や企業の間で十分確立されていないことも原因である可能性がある。

 「エージェンシー理論」では経営者と株主の間には利益の不一致があるという前提の下、経営者は株主の代理人で、取締役は株主に代わって経営者をモニターする、とされている。1980年代から米国ではこの理論が浸透し、社外取締役の役割の理解の共通基盤となってきた。日本ではこの考えがそのまま受け入れられている状況ではないため、社外取締役は究極的に誰の利益のため働くか、という点においても多様性があるようである。例えば、金融業務出身者は、次のような指摘をしている。

金融業界、弁護士…バックグラウンドによる意識の違い

D.:自分はやっぱり「株主との対話を会社がやらないといけない」という意識がだんだん高まってきているな、という印象を受けています。私自身はそういう時に、やっぱり元バンカー(銀行家)としてのレガシーがまだ残っていると感じます。比較的ほかの社外取締役と比べて、機関投資家を強く、意識していると思います。だからこそ、会社の経営者の利益といいますか、彼らの立場も理解しないと。例えば、完全に株主の観点からみてこうやるべきか、ああやるべきかという、そればかりの指摘もあんまりうまくいかないんです。(元経営者)

 一方、弁護士出身の社外取締役は、金融出身者とは異なる視点を提示している。

E.:役員というのは株主を代表して利益を守るというような観点の議論が多いんですよね。(私には)そこまでの意識は正直あまりなくて。会社にいらっしゃる従業員の方のほうが大切で、今のところはそこがしっかりしないと。株主って結局、こう言ってはなんですが、株価ですよね。社内がきちっと、しっくりきていないと、恐らく最終的には株価に反映しないんだろうなと。会社は「人」なので。(弁護士)

F.:あるメガバンクから降りてこられた、上の方の方。降りてこられた方なので、本籍はやっぱりそのメガバンクにお持ちなのです。感情的な面がどうなのかなと思って観察していたのですけども、社外役員ですが自分の本籍は(その)メガバンクだ、と思ってらっしゃる方が多くて、それだとやっぱり当該会社は伸びないよねって感じなのです。結局、その自分の会社を愛する所までいってらっしゃらないのかなと思っていて。(弁護士)