今後も貿易の伸び悩みは続く見込み

 市況の低迷は、海運各社の過剰投資だけでは説明がつかない部分がある。GDPが成長しているにもかかわらず、世界の貿易が伸び悩んでいるのだ。

2012年以降、GDPと貿易の相関関係に異変が出ている
2012年以降、GDPと貿易の相関関係に異変が出ている
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 これまでは、GDPが世界的規模で成長すれば、それを上回る比率で世界貿易が伸びるという相関関係があった。

 それは数字にはっきりと表れている。日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査では、世界の実質GDP成長率を分母、実質貿易の伸び率を分子とした場合、長い間その倍率は1~3の範囲で推移していた。例えば、GDP成長率が3%だった場合、貿易伸び率は3~9%だった。

 だが、2012年からこの相関関係に異変が生じている。2012年~2015年まで倍率は0.1~0.8にとどまっている。つまり、貿易の伸び率がGDP成長率を下回っているのだ

 貿易の専門家たちはこの現象を「スロートレード」と呼ぶ。10月20日には、日本銀行が「スロー・トレード:世界貿易量の伸び率鈍化」というリポートを公表した。

 海運各社は従来のように貿易需要が伸びることを見越して船を増やしたが、想定より需要が伸びず、供給過剰に陥った。世界貿易の異変が、海運再編を促したと言っても過言ではない。

 スロートレードについては、様々な要因が挙げられている。1つは製造業の地産地消が進んでいることだ。

 例えば、中国では産業のすそ野が広がり、自動車など組み立て産業における部品の現地調達率が高まっている。ジェトロの調査によると、中国進出の日系企業による原材料・部品の現地調達率は、2005年の53.5%から2015年には64.7%に高まっている。

 特にスロートレードは世界経済の成長ドライバーである新興国で顕著だ。2005年~2015年におけるGDPと貿易の相関関係の倍率は、先進国が1.5倍なのに対して、新興国は0.6倍である。

 2つ目の要因は、保護主義の傾向が強まっている点だ。自由貿易協定の締結が進む一方で、貿易制限措置の発動が増えている。

 世界貿易機関(WTO)の調査によると2015年10月から2016年5月までの期間で、合計145件の貿易制限措置が発動されたという。これはリーマンショック後で最も多い水準に達しているとWTOは警鐘を鳴らしている。

 さらに、今後は先進国でも保護主義が台頭する可能性がある。米大統領選を戦う民主党のクリントン候補、共和党のトランプ候補が共に環太平洋経済連携協定(TPP)に反対している。

 WTOのロベルト・アゼベド事務局長は経済成長と貿易との相関関係について、今後数年は元の水準に戻らないとの見通しを示している。日本の海運3社のコンテナ事業の統合は、世界のモノの流れが大きく変わっていることを象徴している。

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1ページ本文中
「140TEU」とあったのは
「140万TEU」
の誤りでした。お詫びして訂正いたします。
本文は既に修正済みです。 [2016/11/01 11:00]