採算悪化の構図に共通項

重工系を発端に再編が起こる可能性
●主な企業の相関図
重工系を発端に再編が起こる可能性<br />●主な企業の相関図
注:米調査会社 IHSの統計から本誌作成
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 IHIは特異な例ではない。川崎重工業は9月末、今期業績予想で、純利益を325億円引き下げ、165億円とした。ノルウェー向けの海洋開発作業船などの採算が悪化するためだ。

 併せて造船事業について存廃を含めて検討すると表明。「現在受注済みの船舶に関しては全社体制で完工します」。暗に撤退を前提とするような物言いに対し、他社は「そこまで言って建造中の現場の士気が保てるのか」と驚きを隠さない。

 川崎重工の金花芳則社長は「存続、撤退、提携、すべてが選択肢」と執着しない。同社をめぐっては2013年、当時の社長が三井造船との経営統合を推進。「造船色」が強まることを嫌った他部門役員からの総スカンを食って解任された因縁もある。

三菱重工の累積損失は2500億円超

 三菱重工業は米系クルーズ会社から受注した大型客船2隻に難渋する。1番船を3月に引き渡したが、累計損失は2500億円超。10月中旬には大型客船は今後受注せず、造船の立て直しに向けて今治造船など専業3社との提携協議を加速すると表明。造船の分社化や生産体制の見直し、専業各社との資本提携も視野に入れる。

 IHI、川崎重工、三菱重工とも今期末をメドに具体策をまとめるが、背景でも多くの共通項がある。

 トラブルに見舞われているのは、2010年代前半の一般商船の需要停滞期の受注案件が目立つ。三菱重工の木村和明常務執行役員は「受注最優先との経営判断があった」と指摘。何とか操業水準を確保しようと、結果的に見切り発車の受注となった面は否めない。

 海洋関連や大型客船は技術的な難易度が高い。重工各社は当時、コスト競争力に勝る国内専業や中韓勢と、一般商船ほどは競合しないと考えた。だが肝心の技術力が伴わず、高付加価値路線が裏目に出た。

 足元では一般商船の受注環境も再び冬の時代。環境規制に伴う駆け込み需要の反動や新興国の成長鈍化が響く。八方ふさがりとなった重工系を中心に再編へ足並みがそろいつつある。

 今後注目されるのは重工系とはいえ造船が本業の三井造船や規模の利益を重視するJMU、専業大手の今治造船などの動向だ。

 再編の場合、他産業では工場の統廃合を通じた生産性向上などが定石。だが造船所は協力会社を含めて数千人の雇用の場でもある。構造改革のこぶしを振り上げたものの、落としどころを探るのは簡単ではない。