女性向け動画サイトを手掛けるC Channel(東京都港区)は、10月から新たに設けたCOO(最高執行責任者)として渡邉 康司氏を招へいした。創業者である森川 亮氏はCEO(最高経営責任者)と新たにCEO・COOの2人体制で経営を推し進めていく。
渡邉氏は1990年に読売広告社に入社。広告世界大手の仏ピュブリシス・グループ傘下の英ゼニス・オプティメディア(中国・北京オフィス)、英WPP傘下のグループエム・ジャパンなど広告業界を渡り歩いた。2009年にはグループエム・ジャパンの代表取締役を務めるなど経営経験もある。創業から5年、C Channelが新たにCOOを迎えた理由は何なのか、今後の事業の方向性はどうなるのか。森川・渡邉両氏に話を聞いた。(聞き手は佐伯真也)
C Channelの森川 亮CEO(左)と渡邉 康司新COO(右)。写真は北山 宏一、以下同じ
今回、渡邉氏を新設したCOOに招へいしました。狙いは何ですか。
森川 亮氏:C Channelを立ち上げて5年が経ち、ある一定の規模にまで拡大しました(今年7月のSNS上での動画再生回数は約3億6000万回)。メディアのビジネスは広告が非常に大事で、人脈も知識も求められます。長期的に伸ばすには専門性が必要です。
私自身は、広告の事業を手掛けたことがありません。C Channelを次のステージに引き上げるためには経営経験がある方に加わってほしかった。そういった理由で、今回、渡邉さんにCOO就任を打診したわけです。
もともと、渡邉さんとは広告代理店時代からメディアとしてお付き合いはありました。我々は日本以外でも事業を手掛けていますので、一昨年には香港で打ち合わせをしたこともあります。海外での経験も豊富ですので期待もしています。
渡邉さんにお聞きします。COO就任の打診はいつで、どういった心境だったのでしょうか。
渡邉 康司氏:お誘いをいただいたのは、今年の初夏のタイミング。直感的に「面白いな」と。森川さんの手がけていた事業、森川さん自身にも興味がありましたし、何かお手伝いできることがあればと思い参加を決めました。
既存事業は新COOに任せる
C Channelは今後、CEOとCOOの2人による経営体制になります。2人の役割分担はどうなるのでしょうか。
森川氏:渡邉さんには、まずは広告事業を束ねて成長してもらう。その後、既存事業全般を見てほしい。我々は、メディアだけでなく母親向けの事業やEC、海外事業などを展開しており、私がすべてを見るのが難しくなってきました。私が新しいモノを立ち上げて、(渡邉さんのような)経営者に成長してもらう形を作っていきたい。
渡邉さんの経歴をみると、読売広告社を皮切りに海外の広告代理店を渡り歩いています。その知見をC Channelでどう生かしますか。
渡邉氏:私の印象だとC Channelは今まで短期間でメディアを軸にいくつかのサービスを立ち上げてきました。次のステージでは、事業を安定化し質を高めていきたい。組織体制も含めてリードできればと考えています。
渡邉さんの経歴から、海外事業の強化という印象を持ちましたがそうではない?
森川氏:そうですね。まずは国内をしっかりやっていただく。今までは流れに身を任せて事業のタネを蒔いてきました。これを「木」にそして「森」にして、最終的に「山」にしてほしいですね。
新COOとしての目標はありますか。
渡邉氏:国内のメディア事業をフックに、まだまだ国内のECと広告事業は伸ばせます。2年後の19年には、私が統括する部門の売上高を2倍にするのが目標です。
国内事業を今後伸ばしていくカギは何ですか。
渡邉氏:女性向けのメディアとして、一定のフォロワー数を確保しています。これをどう生かすかがポイントになってくるでしょう。このままメディア事業としてもそれなりに成長するでしょうが、我々の集めた資産をどう生かしていくかがチャンスでありチャレンジになります。
プラットフォームにとどまらない
やはりプラットフォームを握ることが重要だと?
渡邉氏:そうですが、メディアやデジタルプラットフォームにとどまらないようにしたい。
森川氏:我々も女性向けメディアとしてスタートしましたが、事業は派生しています。結局はお客様、クライアントが欲しいモノを女性向けではすべて用意しようとしてます。広告だけでなくEC、商品開発、国内だけでなく海外へと広げるイメージです。パーツパーツを情報とうまく組み立てて次のステージに持っていく。
次のステージの方向性のイメージを聞かせてください。
渡邉氏:あんまり話すとネタバレになってしまうけど……。ともするとオンラインはオンラインの中だけで進化しがちです。その枠に捉われず、エッセンスを抽出して違うところで展開していく感じでしょうか。「デジタルプラットフォーム」「動画メディア」といった概念でないサービス、組織に変えていきたい。
そういう意味では商品開発などの事業が重要になってきそうです。
森川氏:そうですね。今まではメディアはメディア、ECはEC、マーケティングはマーケティングと部署が分かれていました。もう少し一緒にできるのかなと。組織も含めて大きく変えていく必要があります。
海外事業の現状は。中国では5月に上海で美容ECや美容メディア関連事業を手掛けるLUCE Networksをグループ化するなど攻勢を強めています。
森川氏:我々のようなターゲットを絞り込んでいるメディアは、国内だけでは成長に限界があると感じています。とはいえ、ターゲットを広げると曖昧になってしまいます。やはり、若い女性向けにはこだわりたい。
海外でも国や地域によって趣味嗜好が違います。今はアジア、とりわけ中国にフォーカスして展開しています。中国は広告よりもECの市場が大きい。進出を伺う日本企業も多いので、お手伝いしながら一緒に出ていくイメージです。
中国でECと聞くと競争が激しい気がします。
森川氏:中国については正直、やってみないとわからない面はあります。ただ市場は大きいので、失敗してもある程度の規模には持っていけると思っています。その規模をどこまで伸ばせるのかは市場を見極めながらになるでしょう。
中国の若い女性は、富裕層が増えてきて「メード・イン・ジャパン」の質の高い商品が欲しい機運が高まっています。日本の商品やファッションへの関心は依然として高い。それだけでもかなりの潜在ユーザーがいます。
特に口に入れるモノと体につけるモノへは、日本製を支持してくれます。メディアとの相性で言えば、スキンケアは有望です。具体的には日本企業と共同で中国オリジナル商品の開発を進めています。大手企業は自前で中国に進出できますが、小規模な企業は自前で出ていくリソースがない。我々が販売網を構築することで協業体制は築けます。
共同開発をしている企業とはある程度はエクスクルーシブな関係です。「安全な日本製の商品を買うならここ」というプラットフォームを構築できれば勝機はあるはずです。
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