市場は上下両院のねじれ状態を望んでいる

 これはマーケットのメーンシナリオでもある。クリントン政権が誕生すれば、連邦最低賃金の引き上げや製薬業界、金融業界に対する規制強化が予想される。フラッキング(水圧破砕法)に伴うメタン排出規制に言及していることを考えれば、最悪期を脱しつつあるエネルギー業界にも打撃を与えるに違いない。「全部が『青』(民主党のこと)でも困るというのがマーケットのコンセンサス」(ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルの雨宮愛知シニアエコノミスト)という声が上がるように、市場は上下両院のねじれ状態をある面で望んでいる。

 もっとも、ねじれ状態というメーンシナリオが将来的にいいかどうかは別問題だ。下院選における共和党の負け方にもよるが、勝利が確実視されている候補者はティーパーティ運動の流れをくむ保守強硬派、フリーダム議連のメンバーが多い。裏を返せば、下院選で負ける可能性が高いのはライアン下院議長に近い主流派、穏健派である。フリーダム議連は妥協を許さず、予算審議の遅れによる「政府閉鎖」も辞さないゴリゴリの強硬派。ライアン議長が来年の議長に選ばれるのかどうかは(立候補するのかどうかも)定かではないが、フリーダム議連の濃度が増せば、妥協の余地がなくなり、下院共和党がより強硬な手段に出ることが十分に考えられる。

ねじれ状態の先にあるさらなる混沌

 市場が警戒しているのは来年3月に期限が切れる債務上限の引き上げ措置だ。米国は政府債務の上限を議会が定めているが、2年前に債務上限の引き上げを巡ってオバマ政権と議会が紛糾、デフォルト(債務不履行)を回避するため2017年3月までの暫定措置として債務の引き上げにこぎ着けた経緯がある。3月に上限問題が再燃するが、小さな政府を信奉するフリーダム議連の影響力が増した議会で妥協が図られる保証はない。

 共和党や市場が望むねじれ状態。だが、その先にあるのはさらなる混沌かもしれない。