(写真:松富かおり)
(写真:松富かおり)

 米国に対する姿勢も異なる。サウジにとって最大のライバルであり脅威であるイランを封じ込めるためにサウジのサルマン国王は、同国を訪問したトランプ大統領を大歓迎し、膨大な額の武器購入や経済協力を約束した。一方トルコは、米国がイランとの核合意から離脱し今後イランからの石油を購入しないよう関係国に促しているにもかかわらず、「この制裁に加わらずイランからの石油を購入し続ける意思」を既に表明している。

 オスマン帝国の栄光を再現したいと夢見るエルドアン大統領にとって、スンニ派イスラム国家の盟主を気取るサウジアラビアは疎ましい存在だ。サウジ王家の権威の源泉となっている「ムスリムの聖地メッカもメディナも、オスマン帝国時代には、我々のものだったではないか」と心の中では思っていることだろう。

 エルドアン大統領は過去にはイスラエルの大統領をダボス会議の場で攻撃し、サラフッディーンに例えられたりしている。サラフッディーンは十字軍からエルサレムを取り戻したイスラム世界の英雄だ。「イスラム世界をリードしていけるのはトルコだけだ」とも発言している。支持者たちは「エルドアン大統領こそイスラム世界を率いるリーダーとしてふさわしい」と折に触れ発言する。

 エルドアン大統領の2010年頃からの言動を追うと、同氏が「イスラム世界のリーダー」として崇められたいという願望を持っているのは確かだ。

対照的なサウジ皇太子とトルコ大統領

 しかし、「イスラムの2大聖地メッカとメディナの擁護者であるサウジ王家」の権威はかなり大きい。加えて、台頭するムハンマド皇太子は、エルドアン大統領の目に「いつか対決せざるを得ない相手」として映っていたかもしれない。

 同皇太子は、「石油依存からの脱却」構想を打ち上げ、西側のビジネス関係者などに改革者としてのイメージを抱かせた。「古いイスラムを自由化する人間」として外の世界に自分をアピールし、自分の経済構想に外国人投資家を集めようとしてきた。ソフトバンクの孫正義会長など、日本のいくつかの企業がサウジの経済改革構想に興味を示してきたのはそのためだ。

 また、「国内の人権抑圧に対する海外からの非難を抑える」ために様々な国から大量の兵器を買うなどしてきた。トランプ大統領が1100億ドルの武器購入を約束され、「それが米国内で45万人、50万人、65万人、いや100万人の雇用を支える!!」とサウジ擁護論を言い立てたのはその一端と言えるかもしれない。

 同時に宗教的制約の厳しかったサウジ国内で女性に車の運転を許可し、映画の鑑賞を国民に認めるなど、改革者のイメージを広げる「国内改革」を進めてきた。

 ただし、 ムハンマド皇太子は専制的で、批判するものは拘束し弾圧するという二面性も持っている。たとえば、国外に居住し、サウジ王家を批判してきた3人の王子うち2人は拘束されサウジ国内に連れ戻された。残った一人、カレド王子は身の危険を感じドイツに亡命した。

 政府を批判した国内のジャーナリストも拘束されている。サウジ国内に現在、表現の自由や報道の自由はない。

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