ドイツやフランスと、英米の間に「温度差」

 3つ目はサウジの説明の矛盾が白日の下にさらされている点だ。検証しにくい事件であれば、真実は闇の中に葬られたかもしれない。今回はサウジの説明を覆す情報がトルコ側から次々と発信され、人々はやり取りをリアルタイムで確認できる。

 サウジ政府の対応については、各国政府からも批判の声が上がっている。ドイツのメルケル首相は20日に「力の限り非難する」との声明を出した。先進各国の外相も批判の声明を出している。

 一方で、態度がはっきりしないのが米国と英国である。トランプ米大統領は米メディアのインタビューに対して、「サウジとの関係を絶つことは望ましくない」と述べるなど、できるだけ関係を悪化させないような発言を続けている。サウジは米国にとって、大量の武器を購入してくれる重要な取引先であるほか、イランの影響力抑止など中東戦略の要諦でもある。

10月20日にロンドンで行われたEU離脱に関する再度の国民投票を求めるデモ行進
10月20日にロンドンで行われたEU離脱に関する再度の国民投票を求めるデモ行進

 英国も歴史的にサウジとの繋がりが深いうえに、今ではビジネス面でも強い関係を持っている。サウジからロンドンの金融業界などに巨額のマネーが流れ込んでいる。さらにサウジは英国から大量の武器を購入している。2017年の武器輸入額では、英国が米国に次ぐ2位になっている。

 今年3月、英国のメイ首相とサウジのムハンマド皇太子は英首相官邸で会談し、今後数年間で2カ国の通商や投資を約650億ポンド(約10兆円)規模とすることで合意。英航空・防衛大手のBAEシステムズの戦闘機タイフーン48機をサウジに売却する件についても、最終調整を進めることで合意している。メイ首相はEU離脱を控え、資金力の豊富なサウジとのパイプを強化する思惑がありそうだ。

 英国はEU離脱の方針が固まらず、政治が混乱している。交渉の1つの期限だった17日からのEU首脳会議でも結論は出ず、20日には再度の国民投票を求める大規模なデモ行進が行われた。メイ首相がサウジ問題でも対応を誤れば、政治の混乱に拍車をかけることになる。