グーグルの地図から消えたSVFオフィス

 記者は10月19日、ロンドンのSVFオフィス周辺を訪れてみた。今夏までは米グーグルの地図アプリにオフィスの場所が表示されていたが、当日は表示されなくなっていた。オフィスの入り口にはSoftBankの文字が小さく記されているが、人の出入りが少なく、ひっそりとしていた。

ロンドンの高級住宅街にあるソフトバンクビジョンファンドのオフィス
ロンドンの高級住宅街にあるソフトバンクビジョンファンドのオフィス

 今回は世界屈指のリスクテーカーである孫会長の腕の見せ所との分析もある。ある金融関係者は「欧米のビジネス界の腰が引けている時にFIIに出席し、しっかりとサウジに関与できれば、ムハンマド皇太子の信頼は絶大なものとなる。世間の声は移ろいやすい」と指摘する。カショギ氏の殺害については、サウジの権力闘争の一環との見方もある。

 だが事件の真実と同時に大事なのは、サウジやムハンマド皇太子に対して世界の多くの人々がどのような印象を持つかだ。今回の事件は「サウジ記者殺害事件が米英政治の波乱要因に」で触れているように、欧米メディアが連日トップニュース扱いで報じている。

 世間の目は厳しい。ロンドンでは今月11日に、自然史博物館がサウジのためのレセプションを開催しようとして、多くの抗議が寄せられた。英メディアのガーディアンは、「自然史博物館は血塗られたマネーを受け取った」と激しく批判した。

 一方、サウジ政府系の英字メディアは、レセプションは開催され、サウジ大使がホストを務め、外交官や学生などが集まり成功裏に終わったと報じている。

 18日には国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチなどの非政府組織(NGO)が国連本部で記者会見を開催。殺害事件の真相を解明するために、独自調査に乗り出すよう国連に求めた。

 こうした世論の声を政治やビジネスは敏感に感じ取っている。昨今の個人情報の流出やセクハラなどで社会的な批判にさらされているシリコンバレーの企業は素早く反応した。PIFとSVFから手厚い出資を受けているにもかかわらず早々と欠席を決めた米ウーバーのダラ・コスロシャヒCEOはその典型例である。これ以上、経営における「サウジリスク」を高めたくないのだろう。

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