韓国SKハイニックスを突き動かした危機感

これまで東芝はサンディスク(現ウエスタンデジタル=WD)と協業してサムスンに対抗してきました。WDとの関係がこじれたままではサムスンと戦うのは厳しいという指摘があります。

杉本:そこにはメディアを含めて誤解があるのではないでしょうか。旧サンディスクと東芝は両社で合弁会社(JV)を作り、協力して生産設備を購入してきました。工場の人員やオペレーション(操業)は東芝メモリが手掛けています。JVは共同開発の主体というよりむしろ、お金の出し手でありペーパーカンパニーと呼べる存在です。

 確かにサンディスクからも人員は出ていました。でもそれは、量産の立ち上げ時などで東芝側の人員が不足している時に、力を借りていたにすぎません。したがってサンディスクがいなくなっても、資金の出し手が確保できればある程度カバーできる。ただこれまでも協業してきていますので、今後も関係を続けていくのは自然な流れでしょう。

東芝メモリについては3年後をめどに、新規株式公開(IPO)することを目標に掲げています。株式売却などベインの出口戦略のイメージは。

杉本:株式市場への影響を考えると、一度に全部放出するのは難しいでしょう。これまで我々が出資してきた会社もそうでしたが、段階的にイグジットしていくことになります。ただIPOは出口の始まりにすぎません。必要であれば経営のサポートをしながら成長させて、徐々に株式売却を進めていくことになるでしょう。

株式譲渡契約では、韓国SKハイニックスは今後10年にわたって15%超の議決権を保有できないと明記されています。SKハイニックスにとって出資する利点は何になるのでしょうか。

杉本:アップルやデルに近い考えではないでしょうか。仮に東芝メモリがWDに飲み込まれると、シェア下位のSKハイニックスにとってはメモリービジネスが「ゲームオーバー」になることを意味します。その危機感が彼らを突き動かした。それだけフラッシュメモリーの将来性を買っているということでしょう。

買収交渉ではWDが優位になった時期もありましたね。経済産業省の介入があったのは公然の秘密になっているようですが。

杉本:ははは。経産省の介入があったのかどうかは私には分かりません。ただ独占禁止法のリスクを考えると2位と3位が一緒になるのは厳しいでしょう。またWDが最終的に100%の議決権を持ちたいとの意向を譲らなかったことも、最終的な売却決断に影響したのでしょう。

独禁法の審査に関しては、シェア5位のSKハイニックスの出資を危惧する声もあります。

杉本:独禁法についてはすでに各国でファイリングを始めており、来年3月末の売却完了をターゲットに全力で進めています。仮に3月末までに間に合わない場合は改めてどうするか考えるしかない。

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