ホスピスで働く看護師たちも「雰囲気が変わった」と口を揃える。真ん中は今回のプロジェクトを主導した関西ペイントの赤木雄執行役員
ホスピスで働く看護師たちも「雰囲気が変わった」と口を揃える。真ん中は今回のプロジェクトを主導した関西ペイントの赤木雄執行役員

社員の目の輝きが変わった

 関西ペイントの石野博社長は、これらの事業が収益として貢献するまでには、10年はかかると見る。ただ、それでも、プロジェクトを途中で簡単に止めるつもりはない。「関西ペイントの次の100年を支えるために欠かせない事業になる」(石野社長)との自負があるからだ。

 さらに、しっくい塗料のアフリカ展開は、社員のモチベーションを高める効果ももたらしている。自動車向け塗料が中核の時代、関西ペイントの中心顧客は自動車メーカーだった。いわゆる、企業向けビジネスであり、関西ペイントの社員は自分たちの仕事が消費者にどう貢献しているのかを実感する機会は少なかった。

 ところが、ホスピスでの活動は従来のビジネスとは異なり、自分たちの手がけた塗料が、人の命に直接的に貢献していることを実感できる。「社員の目の輝きが変わった。働きがいを高めたという点で大いにプラスになっている」と赤木執行役員は言う。

 いわゆる「ミレニアル世代」とよばれる若年世代や、有能な人材の少なくない割合が、報酬や肩書だけではなく、会社に対して働く意味を求めていると言われる。「自分の手がけている仕事が、社会の役に立っているのか」。そう考える人が増える中で、関西ペイントのアフリカでの展開は、社員に働きがいをもたらす重要な要素になりつつある。

 しっくい塗料は、今も改良が続けられている。今年5月には、壁だけでなく、布などに塗料を塗ることも可能になった。この技術を利用すれば、例えば救援テントなどに塗り、無菌状態に近い簡易手術室などに使えるという。

 世界の塗料メジャーと関西ペイントとの差は、大きい。それでも世界トップグループ入りを諦めない同社にとって、アフリカ市場の制覇は必達目標だ。しっくい塗料を始めとした特殊塗料の重要性は今後さらに高まっていくだろう。その意味で、南アフリカのホスピスでつかんだ成果は、同社のアフリカビジネス拡大のきっかけとなる可能性は十分にある。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。