ホスピス内にしっくい塗料を塗っている様子
ホスピス内にしっくい塗料を塗っている様子

 記者も実際にホスピスを訪れ、院内を歩いた。湿気を吸収しているからだろうか、塗料を塗った部屋は一様に涼しい。特有の陰鬱した雰囲気はあまりなく、むしろ清潔で明るい印象を持った。日差しを浴び、笑みを浮かべながら佇む患者の姿が印象的だった。

 世話役の看護士も、塗料の効果を実感する声を多く聞いた。彼女たちは「患者の体調は目に見えて改善している」と口を揃える。院内の雰囲気も随分と明るくなったと言う。

 もともと関西ペイントは、自動車向け塗料ビジネスに強く、消費者向けの建築用塗料での存在は小さかった。海外市場拡大を目指し、同社はアフリカを始め世界各国で建築向け塗料ビジネスを強化している(詳細は、2016年10月17日号の企業研究を参照)。その意味で、しっくい塗料は海外展開の強力な武器となる可能性を秘めている。

しっくい塗料は子供病棟にも塗られた
しっくい塗料は子供病棟にも塗られた

 もちろん、課題もある。一つは、しっくい塗料の効能を、より精緻に検証していく必要がある点だ。看護師の証言は確かに有益だが、現状は主観の域を出ない。科学的根拠が検証されたわけではないため、今後、大学などと共同で効果を検証していく必要がある。

 さらに大きなハードルは、アフリカで商品を販売して採算があうかという点だ。特殊塗料を現地で調達するための調達網、生産方法の移転に加え、現地で広げるためのマーケティング費用などを考えると、コストはそれなりにかかる。一方で、アフリカの平均所得は先進国のそれに比べまだまだ低く、採算を合わせるには相当の工夫が要る。

 関西ペイントは、もう1つの特殊塗料である「蚊を寄せ付けない塗料」の展開でNGO(非政府組織)と連携しているが、しっくい塗料でも同様の方法を検討している。これら以外にも、認証機関からのお墨付きをもらうなど、踏むべき手続きは無数にある。

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