こうしたサービスに楽曲を提供するアーティストはあらゆるサービスに出すし、出さないアーティストはどこにも出さない傾向にある。つまり、楽曲の数や種類で差別化するのは難しい。現状、例えばスポティファイは若干、邦楽のラインナップが弱いが、こうした「誤差」は時間とともに平準化されていくだろう。

 そうした中、スポティファイの「無料プラン」はほかのサービスと一線を画する武器になっている。

無料プランで広告を視聴中の画面。ラジオのCMのように音声がカットインし、画面を開いていれば動画も流れる

 無料会員の視聴中は、数曲に1度、時間にして15分から30分に1度、動画・音声の広告が30秒流れる。飛ばすことはできない。また、有料会員に比べ、音質も若干下がる。だがこれを我慢すれば、パソコンやプレイステーション4といった端末では、無料会員でも自由に4000万曲超から楽曲を選べる。スマートフォン向けアプリでは個別に楽曲を選ぶオンデマンド再生はできないが、20億超あるというプレイリストは自由に楽しめる。

 「最初の約1カ月は無料」という競合サービスは多いが、課金フェーズに入るとユーザーが離脱するという難題に苦しんでいる。しかし無料プランを持つスポティファイはこの離脱を避け、ユーザーの「プレミアムプラン(国内は月額980円)」への移行をじっくりと待つことができる。

 この導線が奏功し、1億人のユーザーのうち、約4000万人と世界最大規模の有料会員を得ることに成功した。エクCEOは、その「還元」が世界中の音楽市場を潤していると強調する。

「無料プランでも広告から収益が生まれている」

 全米レコード協会(RIAA)によると、今年1~6月の売上高は8.1%増の34億ドル(約3470億円)となり、上半期では1998年~99年以来2年連続となる増加となりました。スポティファイの貢献度合いはどの程度なのでしょうか。

エクCEO:CDなど物理的なメディア、ダウンロード販売による著作権収益は縮小していますが、米国では仰るように、今年上半期に8%の成長を遂げたわけです。これは、過去20年において最大規模の成長ですが、我々のような「ストリーミング」メディアがもたらす収益が非常に大きな成長を遂げているためだと言えます(注:米音楽市場のストリーミング配信による売上高は今年上半期で57%増)。

 そして、ストリーミングによって音楽業界に還元される収益の約半分をスポティファイが占めているわけです。そういった意味では、非常に大きな貢献をすることができたと考えています。また、そうしたことを世界中で証明できてきたことが、今回、日本の音楽業界の理解を得られた一因になったとも考えています。

 ただ、無料プランについては、米国の人気アーティスト、テイラー・スウィフトが「音楽は無料ではない」と主張、自身の楽曲をスポティファイから引き上げるなど、まだ反発も残ります。

エクCEO:「音楽が無料で提供されている」という誤解が、まだ音楽業界にあります。無料プランであっても広告収入というものが生まれているわけで、収益は音楽業界やアーティストに還元されているのです。この動きというものはレコーディング産業の歴史の中でも最大の変化であり、この点について、さらなる啓蒙が必要だと考えています。