受像機から「インテリジェントデバイス」へ

高度経済成長期に「三種の神器」と言われ、長く家電の王様として君臨してきたテレビですが、消費者のライフスタイルの変化はこれを大きく変えています。「未来のテレビ」はどんなものになるのでしょうか。

高木:テレビは長らく、放送波による映像を映すだけの「受像機」でした。放送業者が唯一の映像の供給元で、テレビを牛耳っている時代でした。それが終わってテレビは情報発信のための「インテリジェントデバイス」となり、さらにその使い方、定義の仕方がそれぞれの家庭や個人によって違ってくるのだと思います。

 動画配信大手の米ネットフリックスなどを見ても分かるように、インターネット経由で優良コンテンツが配信され、それを楽しみたいというニーズが増えています。実は毎年、1~1.5インチずつテレビ画面の平均サイズが大きくなっているんです。ここに、テレビ業界そのものが発展する可能性があると考えています。

ソニーの有機ELテレビ「ブラビアA1」(写真: つのだよしお/アフロ)

 ネットを介して上質なコンテンツを供給するサービスが増え、それに応じてテレビ画面のサイズも大きくなる。これが、ここ数年で起きている変化です。そうなると、もっと大画面でコンテンツを見たいという人が増え、その特徴に合わせたテレビが欲しい、という流れになる。だから映画などに向いている有機ELテレビが旬を迎えているわけです。

 コンテンツの進化が、テレビ市場の変化を主導していく形になっていくと思います。ハードがコンテンツを後追いしていく格好になるでしょう。ネットコンテンツ企業のパワーが絶大なので、これとハードが組み合わさった時のシナジーの発揮に、業界全体で取り組むべきだと考えています。お客様も高画質、高音質についてきてくれています。我々は音と映像で生きてきて潰れかかりましたが(笑)、この音と映像はまだまだ進化の途上にあります。

年内に日本市場でAIスピーカーを発売しますが、日本人は大きな声を出すのを恥ずかしがるので、普及の足かせになるという見方もあります。

高木:そこは恥ずかしがらずにがんばってもらって(笑)。

ソニーのAI搭載スピーカー

AIスピーカーはAI部分のプラットフォームを米グーグルや米アマゾン・ドット・コムに押さえられているので、同業他社との差別化がしにくく、収益性の確保が難しいようにも見えます。

高木:確かにAI部分はプラットフォーム化しているので、それを採用したメーカーのスピーカーはすべて同じ土俵に立つことになります。ただ、だからこそ差異化しやすい、と考えているんですね。各社が同じ土俵に立てば、お客様は「じゃあ、どこが違うの?」とまず考えますから。

 我々はプラットフォームに一銭も投資しなくて済んでおり、その分を差異化のための投資に回せます。ソニーがオーディオメーカーとして培ってきた強みは音の出し方や臨場感にあり、これを商品に盛り込んでいます。逆に言うと、それがなければコモディティーメーカーになるしかないし、それでは儲かりません。

 ソニーが特徴を持ったAIスピーカーを売れば、プラットフォームを提供する会社が儲かり、そのプラットフォームが広がることによってソニーがさらにスピーカーを売りやすくなる、という流れになります。AIスピーカーについては、商品を発売する各社とも、(普及するという)確信があってやっているわけではないと思います。日本のオーディオ市場は小さいですが、これを広げるには業界全体でチャレンジしていく必要があります。