
石油元売り大手、出光興産と昭和シェル石油が進める統合計画の出口がますます見えなくなってきた。10月13日、両社は2017年4月に予定していた統合を延期すると発表した。出光株の33.92%を握り筆頭株主でもある創業家が統合に反対する姿勢を明らかにしているためだ。
両社が13日夕に開いた記者会見では出光の月岡隆社長、昭シェルの亀岡剛社長グループCEO(最高経営責任者)が揃って登壇し、「出光と昭シェルは最適の組み合わせ」(月岡社長)、「ある程度時間をとっても、ステークホルダーの理解を得て統合に進みたい」(亀岡社長)と、引き続き統合実現に取り組む考えを強調した。だが創業家側を納得させたり、反対を阻止する具体的な方策は明らかにはならず、両社が打開策をいまだ示すことができていないことが改めて浮き彫りなった。
「4月1日の統合を目指してきたが、(創業家側が反対する)今の状態では無理だと判断した」。出光の月岡社長は延期の理由をこう説明した。予定通り経営統合を進めるためには、今年中にも臨時の株主総会を開き、株主の3分の2以上の賛成票を得る必要がある。創業家側の合意がないままに総会を強行し、仮に3分の2以上の賛成票を集められなかった場合、計画は破談となる。年末まで残り2カ月を切った今、期限内に創業家を説得して合意を取り付けるのは難しく、両社の経営陣は延期を決断せざるを得なかった。
不透明感は変わらず
だが統合延期は時間稼ぎに過ぎず、両社は依然として袋小路に追いつめられている。
出光は統合の前段階として、10〜11月の間に昭シェルの筆頭株主であるロイヤル・ダッチ・シェル(RDS)から議決権比率で33.3%の昭シェル株を取得する計画を進める。だが、これも創業家側の対抗策により難しくなっている。「出光興産、統合反対の創業家が打ち出した『奇策』」でも触れたように、今年8月、創業者の長男で5代目社長も務めた出光昭介名誉会長が昭シェル株を市場で取得したと発表。創業家側の説明によれば、これにより何らかの対策なしに出光がRDSから直接昭シェル株を取得することができなくなったという。
さらに「インサイダー取引違反になるので創業家の方と会ってはならないという警告をいただき、コミュニケーションができなくなった」(月岡社長)ため、出光経営陣側と創業家側とが協議する機会も失われてしまった。出光は昭シェル株を取得した後でなければ、現在の昭シェル第2位株主であるサウジアラムコと統合に向けた具体的な協議ができないという。その手段が封じられ、創業家側との話し合いも進められない状況に陥ったわけだ。
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