電池の内部ショートは防げない

 サムスンは詳しい発火原因を明らかにしていないが、リチウムイオン電池を供給する子会社の一部工場で製造工程に問題があったとみられている。

 リチウムイオン電池の内部は、正極材と負極材、そしてこの2つを絶縁する樹脂製のセパレーター(絶縁材)で構成されている。工場の製造工程で電池の内部に金属異物などが混入してしまうと異物がセパレーターを突き抜けショート(短絡)し、異常発熱・発火の原因になることがある。

 電池モジュールには通常、過充放電を抑えたり外部の高温から電池を保護したりする二重三重の機能が搭載されている。だが、セパレーターに異物が混入してしまった場合、内部のショートは避けにくい。そのため製造工程で異物の混入防止を徹底したり、強度の高いセパレーターを採用したりするしか対策がない。

 電池の製造・開発の現場は年々厳しさを増している。スマホメーカーからは「より薄く」「より長持ちを」との要望が尽きないが、そもそも電池の薄型化と容量を大きくすることは相矛盾する。電池メーカーの技術者は、「3日間充電なしで使える電池を作れと言われている」と頭を抱える。

 例えば、電池容量を増やしつつ電池を薄くするためにセパレーターの厚みを減らせば、「異物への耐性が低くなりショートしやすくなる」(別の電池メーカー技術者)。そのため、材料そのものを見直すなどの対策が必要になってくる。

市場が成熟する中でスペック競争が激化

 足元では、リチウムイオン電池よりも安価で電池容量も大きく、さらに小型化もしやすいマグネシウムを使った電池の開発も進むなど、新しい兆しもある。「購買と製造、設計が一丸となり対策や新材料の開発に取り組んでいる」(同)。

 スマホ市場が成熟する中、メーカー間のスペック競争は年々激しさを増している。他社との違いを出すために、電池を含む部品の高性能化を求める声は今後ますます増える。一方で、早期市場投入ばかりを優先していれば、安全性に関わる事故が増えていく危険もはらんでいる。

 今回のサムスンの発火事故は、利便性や革新性を優先したがために生まれた、スマホ業界の「ゆがみ」を露呈した。スマホメーカーは今、革新性と安全性を両立することの難しさを、改めて突きつけられている。

(日経ビジネス2016年10月17日号の時事深層などを基に再構成しました)