希望の政策が急ごしらえのため公約に基づく政策論戦が深まらないことも分かりづらさにつながっている。

 希望は10%への消費増税凍結を主張するとともに、公約に企業の内部留保に課税する案やベーシックインカム(最低生活保障)の導入などを盛り込んだ。

 ただこうした目玉政策に関し、具体的な制度設計や財源は「これから検討」との姿勢。党首討論などでも小池氏は曖昧な説明に終始している。

すっきりしない「首相候補不在」

 一方、安倍首相も消費増税の使途変更で目標に掲げていた2020年度の基礎的財政収支の黒字化は「できない」と明言。黒字化の目標は掲げるものの、新たな黒字化の時期は「現段階で材料がそろっておらず、示すことはできない」と述べるにとどめている。

 政策に代わって小池氏が訴えの柱に据えたのが安倍政権の姿勢への批判だ。森友・加計学園問題に対する安倍首相の説明不足を指摘する声がなお根強いことを踏まえ、小池氏は9日の希望の総決起大会で「森友、加計学園の疑惑について何も知らない、資料がないといった体質を改めるよう今の安倍1強政治にノーと、全国津々浦々で国民に呼び掛けよう」と訴えた。

 日本大学の岩井奉信教授は「安倍首相に批判的な保守系の有権者を取り込もうという戦略だろう」と指摘する。

 小選挙区制度の導入時には政党が政策を競うことで政権交代を実現していくという理想像が語られていた。

 政権奪取を目指す希望が公約に掲げた主要政策の財源の裏付けや制度設計の方向性などを示せないまま選挙戦に臨んだことで、政権選択選挙という位置づけ自体が揺らいだことは否めない。有権者が判断材料とするためには選挙戦を通じ、政策論争の充実が求められている。

 こうした点に加え、すっきりしないのが希望の首相候補の不在だ。小池氏は選挙結果次第で首相候補を判断するとの考えを重ねて表明。8日の討論会では、安倍首相を退陣に追い込むことを念頭に選挙後に自民との連立政権を組む可能性を否定しなかった。

 衆院選後の政局のキャスチングボートを握ろうという狙いが透ける。安倍政権の打倒を目指して希望に投票してみたら、選挙後に自民・希望の大連立政権ができた。希望が首相候補や過半数を制する枠組みを提示していない以上、そんな展開もあり得るということは念頭に置いておきたい。

 連立は組まなくとも前述のように、自民や希望が選挙後、改憲論議など政策ごとに歩調を合わせるとの見方も強まっている。

 従来の与野党対決が大きく様変わりした今回の衆院選。これまで見てきたように選挙戦の構図は一見分かりやすくなったが、選挙後の政権の枠組みなど現時点で読みにくい点も少なくない。

 投票後、「こんなはずではなかった」とならないためには、これまで以上に選挙後の政権の枠組みや主要政策の実現可能性、改憲への賛否、政権担当能力などを吟味する必要がありそうだ。