体長が1ミリ程度の小さな線虫をがん検査に役立てよう──。10月9日、こんな目標を掲げた医師中心の研究会が発足した。その名も「日本生物診断研究会」。高度な検査機器を使わずとも、手軽にがん検査ができるようになれば、早期発見につながるはず。そんな期待を寄せる。

そもそも線虫を使ったがん検査とは何か。
植物や動物に寄生し、土中にも生息しているのが線虫だ。ただの小さな虫ではない。人間はおろか、犬さえも上回る嗅覚を持っている種類がある。
実は医師の間では、がんには臭いがあることが知られている。その臭いを線虫が感じ取ることで、がんの有無を判断しようというのが、線虫がん検査だ。実際には尿の中に含まれる、わずかながん成分に線虫が近づくか否かで判別できる。
この検査技術は、バイオ関連スタートアップのHIROTSUバイオサイエンス(ヒロツバイオ、東京・港)が開発した。費用は数千円。従来のがん検査では、10万~15万円程度の費用がかかっていたから、けた違いの安さといえる。
今回の研究会はヒロツバイオ社長の広津崇亮氏が中心となって呼びかけ、賛同する医師が集まる形で発足した。広津氏は「線虫がん検診の実用化のためには、多くの医師の協力が欠かせない」と狙いを語る。

例えば、線虫ががんを見つけても、次にどんな検査をする必要があるのか、どんな治療を施せばいいのか、といった医学的な知見はまだ乏しい。医師の専門知識を加えながら、実際の医療現場で使える検査方法を確立するのが研究会の目標となる。
研究会は線虫以外の生物にも着目する。生物が持つ驚異的な能力を生かして、新たな診断技術を探っていくという。
2人に1人ががんを患うとも言われる時代。まずは線虫を生かした検査方法は広まるか。研究会の今後の取り組みに注目が集まりそうだ。
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