米グーグルや米ウーバーテクノロジーズの通信基盤を支える黒子企業が、日本で本格的に事業展開する準備を進めている。オランダ・アムステルダムで2011年に創業したスタートアップ、メッセージバードだ。
電話とメールが主流だった企業の顧客窓口は、スマートフォンの登場によって多様化が進んでいる。SMS(ショートメッセージサービス)、ネット電話、チャットなど、ネットサービスを提供する企業を中心に、顧客との新しいコミュニケーション手段を開拓する動きが広がっている。
もっとも、こうした機能を自社でゼロから開発していては時間もカネもかかる。メッセージバードは様々な通信機能をソフトウエアの「部品」として用意することで、初期投資を抑えつつ、すぐに通信機能を開発できるメリットを企業にもたらす。
この分野のフロントランナーは、米トゥイリオだ。2008年に創業した同社は米国でネット企業を中心に需要を取り込んで急成長を果たした。米国では長らく有望なスタートアップである「ユニコーン」と目せられ、16年6月に米ニューヨーク証券取引所に上場を果たした。
このトゥイリオのライバルと言えるスタートアップが、欧州市場を中心に成長しているメッセージバードだ。冒頭のグーグルやウーバー以外に、既に1万5000社以上の顧客を抱える。10月3日には、大手ベンチャーキャピタルの米アクセルと英アトミコから計6000万ドル(約67億円)の資金を調達すると発表した。
ロバート・ヴィスCEO(最高経営責任者)は、米国の著名アクセラレーター、Yコンビネータ―のプログラムに所属した経験を持つ。同CEOに、今後の戦略を聞いた。(聞き手は蛯谷 敏)

メッセージバードはどのようなサービスを提供するのですか。
ロバート・ヴィスCEO(以下、ヴィス):普段はあまり表に出ない企業なので、実際のサービスを紹介しながら説明しましょう。
米グーグルのサービスを利用している方ならご存知かもしれません。彼らはセキュリティ強化の一貫として、携帯電話による「2段階認証」と呼ぶ仕組みを用意しています。
これは、ユーザーがログインする際にIDとパスワードを入力すると、事前に登録しておいた携帯電話やスマートフォンに向けて 、SMSで確認コード送る仕組みです。ユーザーは、確認コードを入力してログインします。携帯電話を使うため、ID/パスワードだけの認証よりもセキュリティを高められます。
現在はネット企業だけでなく、オンラインバンキングを提供する金融機関や送金サービスを手がけるフィンテック企業なども幅広く使っています。我々は、この仕組みを実現するためのソフトをクラウドサービスで提供しています。
ライドシェア大手の米ウーバーテクノロジーズも我々のサービスを使っています。タクシー利用者が指定した場所に着いたにもかかわらず、ドライバーが利用者を見つけられないことがあります。
ウーバーはアプリ内に「電話をかける」機能を用意していますが、この通話に、ドライバーとユーザーの本当の電話番号を使っているわけではありません。我々のシステム側でランダムな電話番号を割り当てることで、互い電話番号を知られないようにしています。これもセキュリティ対策の一環で、シェアリングサービスを提供する企業から高いニーズがあります。
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