「オムニチャネル戦略」は全面見直しへ

 一方で「改めて(そごう・西武の経営状況を)勉強して、買収後にリーマン・ショックなど経済環境の変化などで厳しい経営をしていたことがわかった」とも話した。消費マインドの変化によっては「今後も処理をしないといけない事業は生まれるかもしれない。必要な処理は必要な処理としてやっていかないといけない」と指摘。百貨店のみならず、今後もあらゆる不振事業で改革が必要になるとの認識を示した。

 鈴木氏が肝いりで進めてきた「オムニチャネル戦略」については、新経営陣は全面的な見直しを表明した。

 セブン&アイが提供するオムニチャネルサービス「オムニ7」は、セブン&アイグループの商品をネットで注文し、セブンイレブンで受け取れるなど、グループの相乗効果とネットと「リアル」の融合を進めるための施策だった。井阪氏は記者会見で、従来戦略について「ネット通販事業として展開してきたが、不特定多数の顧客にアプローチしてきたことと、システム起点で進めてきたことが失敗の要因」と話した。「失敗」という言葉を使ったところに、見直しへの強い意志がにじんでいた。

 新たなオムニ戦略については、具体性を欠いた面もあったが、グループ各社が抱える顧客基盤を、ネットを活用しながら、有機的につなげて、マーケティング効果を最大化する構想を示した。

「ヨーカ堂には配慮を感じる」

井阪氏はこれまでのオムニチャネル戦略を「失敗」と表現した(写真:尾関裕士)
井阪氏はこれまでのオムニチャネル戦略を「失敗」と表現した(写真:尾関裕士)

 今回の発表で「構造改革」は緒に就いたばかりだ。そごう・西武以外にもカタログ通販のニッセンなど、買収効果を出せていない事業は他にもある。そして、主要企業としては、百貨店と並んで不振が続くイトーヨーカ堂は、井阪氏の就任前の今年3月に発表した事業改革プランと比べて、あまり踏み込んだ追加のリストラ案はなかった印象だ。希望退職を実施したり、次々と店舗を閉鎖・譲渡したりする、そごう・西武に比べて、改革のピッチには疑問が残る。あるグループ関係者は「ヨーカ堂は伊藤家が立ち上げた祖業であり、今回の中期計画でも配慮を感じる」と話す。

 物言う株主の米サード・ポイントが不振事業の切り離しを求めるなど、セブン&アイに注がれる視線はかつてなく厳しくなっている。ある株式市場関係者は「機関投資家から井阪さんへの期待は大きい。だが、今期中に成果を上げなければ、期待は失望に変わるだろう」と話す。一方で、セブン&アイのグループ企業幹部は「新たな経営陣は、功を急ぎ過ぎている」と指摘する。高い注目が集まった今回の記者会見は、百貨店の3店舗譲渡という「サプライズ」を持ってきた。だが本当に求められるのは、グループが再び結束する求心力を生み出せるかどうかだ。井阪氏の綱渡りの経営は、今後も続きそうだ。