トップの関心が薄れ、品質活動も停滞

 だが、いつの間にか日本メーカーの製品は品質が高いのは当たり前になった。次第に、経営トップの関心が薄れ、「品質担当に任せておけば問題はおきない」と考える企業が増加。品質関連の活動もマンネリ化して停滞したり、活動自体を見直したりするケースさえ出てきたという。

 一方、工場では、現場で働く非正規社員の比率が上昇。正社員と比べて経験が少なく習熟度も低い人材がものづくりを担うようになった。さらに円高を背景にした生産のグローバル化により、工場の海外移転が加速。海外での品質管理に苦労する企業も目立つようになってきた。

 品質関連の課題が増えていく一方で、経営トップの関心は低下していく。状況は深刻だ。「日本の産業がもう一度世界に冠たる『ジャパン・アズ・ナンバーワン』になるためにはどうすればいいのか。経営トップが品質に興味を失いつつある現状を何とかしなければならない」。日科技連の理事長でトヨタ自動車の技監である佐々木眞一氏はこう語る。

 佐々木氏はトヨタの元副社長で、2009~10年に同社が大規模なリコール問題に直面した際の品質保証担当だった。

 「トヨタは2010年頃に大変大きなリコールを実施して、お客様や販売店、すべてのステークホルダーに心配をかけた。『(技術的に)安全なクルマを造ればいい』という思い上がりが少しあった。それを契機に、トヨタはもっとお客様を主体にしたクルマ造りを考えるようにした。その後は商品企画の段階から、お客様が不安に思わないような挙動をするクルマを開発するようになった」(佐々木氏)

 安全基準を満たしているかどうかや技術的に問題がないかだけではなく、顧客の目線に立って、不安がなく、快適に感じるような品質を重視しているという。例えば、高速道路などで前方を走行するクルマに適切な車間距離を保ちながら追従走行するシステム「クルーズコントロール」。「急に加速した」と運転者が感じてびっくりしないようにゆるやかに加速する設計に変えたりしている。「顧客目線の品質」。それが大規模リコールでトヨタが得た教訓だった。

 不祥事以外では注目される機会が減っている日本メーカーの品質。それでも製造業の生命線は自ら生み出した製品の品質にあることは昔も今も変わらない。品質でつまずいて巨額の損失を計上したり、経営危機に瀕したりする企業は、タカタに限らず、最近になって目立っている。

 電子化などによる製品の複雑化、生産のグローバル化、熟練技術者の退職、工場での正規と非正規の従業員の混在……。メーカーの品質管理は難しくなる一方だ。変化が激しい時代だからこそ、経営トップが自ら関与し、品質のあり方を見つめ直すことが求められている。