タカタのエアバッグ問題、日産自動車の工場における完成車検査の不正問題など、日本メーカーが強みとしてきた品質が揺らいでいる。「品質立国」を掲げて世界に飛躍してきた日本のものづくりは大丈夫なのか。
「日本企業の経営者は品質に対する意識が低下している。取締役会でも議題にならない場合が多く、品質が話題になるのは大きな問題が出てきてからだ。日本の強さが揺らいでいる」。10月3日、日本科学技術連盟(日科技連)会長でコマツ相談役の坂根正弘氏はこう強調した。
同日、日科技連は企業の経営トップを対象に、経営と品質に関する議論の場として「品質経営懇話会」を発足させると発表。品質を重視する経営で業績を向上させている様々な企業の苦労や工夫点などを事例として取り上げ、外部にも発信していくという。

背景には日本メーカーの経営者が過去と比べて、品質に関心を持たなくなってきていることに対する強い危機感がある。品質を軽視する姿勢が、様々な企業で相次ぐ不祥事や事故につながっている可能性があるという。
坂根氏は日本メーカーの競争力がグローバルで高まったのはかつての経営トップが、品質に力を注いできたからだと考えている。「1960年代はトヨタ(自動車)といえども欧米勢に後れを取り、この国でいいクルマに乗りたい人はみんな外車に乗っていた。コマツの建設機械も米キャタピラーと比べると(品質が劣っており)すぐに故障していた」(坂根氏)。
そんな中でコマツは経営トップのリーダーシップで全社的な品質の改善活動を推進。建設機械の競争力を向上させて、海外市場を開拓していった。トヨタなどの日本の自動車メーカーも「デミング賞」や「QCサークル」に象徴される品質関連の活動に注力し、ものづくりの力を高めていった。
世界最大の米国市場に進出した日本の自動車メーカーがシェアを高めたのは、高い品質があればこそだった。品質で米国の自動車メーカーを追い抜いた結果、「日本車は、故障などのトラブルが少なく、中古になっても価値が落ちにくい」といった高い評価を得られるようになった。
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