旧体制のうみ出し切る

 セブンイレブンの親会社、セブン&アイ・ホールディングスは9月30日、2017年2月期の連結決算に606億円の減損を計上すると発表した。

 減損処理を行うのは総合スーパー(GMS)事業のイトーヨーカ堂と、百貨店事業のそごう・西武。ともに苦戦の原因は衣料品だ。ネット通販など消費者がファッション商品を購入する手段は増えて逆風が吹く中、両社ともPB(プライベートブランド)商品の開発に力を入れているが、業績への貢献は見えてこない。

 減損総額のうち334億円は、セブン&アイが2006年にそごう・西武を買収した際、将来的に収益を生む潜在力として計上した「のれん」の資産価値を引き下げるものだ。

 そごう・西武の買収はグループ内にコンビニ、スーパー、百貨店まで流通業のあらゆる形態を揃えることで、PB商品の販売などで相乗効果を生み出す狙いがあった。ところが、想定通りの効果はなかなか出なかった。セブン&アイはまず2010年2月期にのれん約400億円を減損処理している。その後も店舗閉鎖や人員整理などリストラを続けたが、今回、再び減損計上を余儀なくされた。

セブン&アイの事業別の営業利益一覧。コンビニ事業の占める割合が大きい。減損606億円は、最終利益の押し下げ要因に
セブン&アイの事業別の営業利益一覧。コンビニ事業の占める割合が大きい。減損606億円は、最終利益の押し下げ要因に
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 のれんはM&A(合併・買収)が成功だったかどうかを映し出す鏡でもある。セブン&アイは10月6日、5月に就任した井阪隆一社長が「構造改革プラン」を発表する。そのわずか1週間前に発表した今回の減損計上は、新体制が同プランで攻めのアクセルを踏み込む前提として、まず旧体制のうみを出し切ろうとしたものと捉えることができるだろう。

 減損により、今期の連結最終利益は800億円と従来予想より53%減る。ただ、600億円の下振れを以てしても最終赤字に転落しないのは稼ぎ頭のコンビニが堅調だからだ。逆にいえば、グループ営業利益の83%を稼ぎ出すコンビニが少しでもぐらつこうものなら、総合流通グループの再建は行き詰まるリスクがあるということでもある。

今後の出店計画、盛り込まず

 セブン&アイ株を大量保有する「モノ言う株主」の米サード・ポイントは、かねて百貨店の切り離しやスーパーの事業縮小を主張してきた。不振事業の立て直しに早期にメドをつけなければ、株主の不満の声はさらに高まるだろう。そのためにもまずは稼ぎ頭であるコンビニの地盤固めが重要になる。

セブン-イレブン・ジャパン創業以来の店舗数と、1店舗あたり売上高の推移(売上高はチェーン売上高を店舗数で割って算出。いわゆる「日販」とはズレが生じる場合がある)
セブン-イレブン・ジャパン創業以来の店舗数と、1店舗あたり売上高の推移(売上高はチェーン売上高を店舗数で割って算出。いわゆる「日販」とはズレが生じる場合がある)
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 8月末、セブン&アイの事業会社トップを集めて開いたグループ戦略会議。セブン-イレブン・ジャパンがこの場で提示した今後3年の経営計画には、出店計画数が盛り込まれなかった。ある株式市場関係者は「売り上げや店舗数など規模にモノを言わせてきたセブンイレブンが、店舗ごとの収益性を重視する意識に変わってきている」と指摘する。

 セブンイレブンはこれまでも世の中の変化をうまく汲み取り、自ら対応することで成長を続けてきた。鈴木敏文氏の引退後、巨艦はどんな方向に歩み出すのか。消費者、加盟店、株主、取引先……。すべてのステークホルダーが固唾を呑み、井阪氏の見据える次の一手に注目している。

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