この時は、2017年3月期末直後で、「それまで見ていない決算の監査を太陽が受けるのは難しかった」(山田総括代表)。そして6カ月に及ぶ対立の挙げ句、PwCあらたは東芝の17年3月期決算を「限定付き適正」にするという“異例”の判断を示した。限定付き適正とは、巨額損失の原因部分の計上時期については認められないが、その他は適正とするというもの。「めったにない判断」(複数の公認会計士)として、これも市場を驚かせた。

 こうして決着はしたものの、他の大手にも太陽にも監査委嘱が出来ず、東芝は下手をすると“監査難民”にさえなりかねなかったのである。

■図4:準大手と中小中心となってきた
2012年度以降の監査法人の合併状況
年度 合併監査法人
2012 太陽監査法人(永昌監査法人)
福岡監査法人(福北監査法人)
2013 太陽監査法人(霞が関監査法人)
2014 監査法人グラヴィタス(大同監査法人)
ひびき監査法人(ペガサス監査法人、新橋監査法人)
仰星監査法人(明和監査法人)
至誠清新監査法人(監査法人啓和会計事務所)
2015 至誠清新監査法人(清新監査法人)
明治アーク監査法人(アーク監査法人)
2016 明治アーク監査法人(聖橋監査法人)
清陽監査法人(九段監査法人)
注:存続監査法人(現名称)と、括弧内は合併相手(消滅法人)
出所:金融庁

企業も監査法人の交代に動き出す

 太陽と優成の今回の合併は、業界再編を目論む優成から持ちかけられたものだったが、太陽にとっては2つの意味で、飛びつきたい話だった。1つは、東芝の監査。東芝とPwCあらたの関係は、依然として好転したとは言えず、2018年3月期以降の監査では交代の可能性がある。合併は太陽にとって、会計士数などマンパワーの拡充を図る絶好の機会になる。

 2つ目は、企業側にも監査法人の選択肢を広げたいという考えが出てきていることだ。これまで日本企業は、基本的に監査法人を変更するのを嫌がってきた。付き合いが長いほど、監査法人が業界事情と自社の会計処理に精通し、「話し合いがしやすくなる」(ある大企業の元CFO=最高財務責任者)のを期待してきたからだ。

 しかし、長期にわたる契約が逆に慣れを生んできた面もある。東芝の粉飾を見逃した新日本もその点を指摘された。2005年のカネボウ粉飾事件や、2011年のオリンパスによる巨額損失隠し事件の際にもそうした課題が浮かんでいた。

 企業にとって、監査法人の長期に渡る契約固定はむしろリスクとなってきたわけだ。東芝粉飾事件の後、新日本との契約が解除になった72社の中に「監査契約が長期にわたるため」という変更理由を挙げた企業が複数社あったのは、その現れだろう。

 太陽と優成の合併決定は、監査法人を取り巻く問題を改めて浮かび上がらせた。

■変更履歴
1ページの本文中、「業界での順位は4位のまま変わらない。3位のPwCあらた~」としていましたが、「業界での順位は5位のまま変わらない。4位のPwCあらた~」の間違いでした。お詫びして訂正いたします。本文は既に修正済みです。[2017/10/02 10:00]