合併の背景には東芝問題があった
背景にあるのは会計士の数。売上高数兆円規模の大企業だと決算期には70~80人、それに次ぐ規模の企業でも数十人の会計士が必要になるため、陣容で劣る準大手以下にはなかなか手が出せなかったのだ。
この点、新生太陽は、「合併で会計士は500人に達する」(山田総括代表)。約1000人のPwCあらたには届かないが、「(これまで難しかった)超大企業でも監査を受け持つ力は十分に付く」(同)。大手寡占の構造に変化が起きる可能性が出てくるわけだ。別の準大手監査法人の代表の中には、太陽同様に再編を模索する動きもあり、変化が連鎖することもありえる。
これは監査法人という業界内での構造変化に留まらない影響を及ぼすかもしれない。それを感じさせるのが、2015年春に発覚した粉飾事件から続く一連の東芝問題。粉飾の発覚当時、東芝の監査を担当していた新日本監査法人は不正を見抜けなかったとして同年末、金融庁から21億円の課徴金納付を命じられた。これによって、新日本は信頼を失い、今年7月までに計72社の顧客企業との契約が解除になった。
さらに新日本の後任となったPwCあらたは、東芝がその後、米原子力事業で出した巨額損失の計上時期を巡って今年2月から同社と激しく対立。2016年10~12月期決算の監査(レビュー)意見を出すのを2度にわたって延期した。東芝の決算発表はそのたびに延期となり、上場廃止の恐れさえ囁かれるなど市場は混乱した。
今年4月には、対立の挙げ句、PwCあらたの監査部隊が約1カ月に渡って東芝本社を離れるという異常な事態にも発展。これに平行して東芝は、PwCあらたの後任を探し始め、密かに太陽に打診している。他の大手監査法人は、前任の新日本以外も、東芝のコンサルティングを関連会社が担当しているなど何らかの関係があり、独立性の問題で後任にしにくかったためだ。
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