
「各社の情報を組み合わせて、これまでにない健康サービスを生み出していきたい」。体重計などの健康機器を手掛けるタニタの谷田千里社長は「異業種タッグ」への抱負をこう語った。
タニタは9月28日、健康管理サービスで新機軸を打ち出した。子会社のタニタヘルスリンク(東京都文京区)が、官民ファンドのINCJ(旧・産業革新機構)および事業会社4社を引受先とする総額35億円の第三者割当増資を実施すると発表。各社の健康情報やサービス、システムを融合したオープンな「健康プラットフォーム」を構築していく。
事業会社として参画するのはイトーキ、SBI生命保険、日立システムズ、法人向け健康診断や人間ドックを手掛ける淳風会(岡山市)の4社。各社が収集する健康や労働関連の情報を、新たに構築するプラットフォームに提供する。1社単独で手掛けるよりも多様な情報を分析できるのが利点だ。東京大学もデータ解析などで参画する。
まずはタニタヘルスリンクが中心となり、2019年度に岡山市で新しいヘルスケア事業を開始する予定。イトーキは働き方のコンサルティング、SBI生命保険は健康情報を生かした新たな保険商品の提供などを模索する。プラットフォームには今後、新たな参加企業を募っていく。
健康分野での新たな異業種タッグだが、存在感が際立つのがINCJだ。第三者割当増資の約7割に当たる23億円を出資し、タニタヘルスリンクの経営に直接関与していくという。高齢化が進む中、健康寿命の延伸は国の重要な課題になっている。米アップルが新型の「アップルウォッチ」で健康機能を強化するなど、ヘルスケア領域にはITの巨人たちも熱視線を送る。
これまでINCJはルネサスエレクトロニクスやジャパンディスプレイなどの経営に関わったが、複雑な利害関係を調整するのに手間取り、意思決定に難航することがあった。出資に伴い、INCJから2名の取締役を出すとしている。民間企業5社が関わる“寄り合い所帯”がスムーズに立ち上がるかどうかは、INCJとの関係が一つのカギになりそうだ。
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