2014年に何が起こったのか

 なにが地方政府を動かしたのか。この年に激変したのは自動車産業を取り巻く政治的環境であった。

 

 新産業の発展は往々にして一部の旧来産業の痛みを伴う。新エネ車の普及により大きな打撃を受けるのが石油産業である。従来、政府との間に太いパイプをもつ石油業界は政治的発言権が強い。以前、排ガス規制を強化しようとした際に、投資負担が重くなる石油業界からの強い反発を受け、導入を先延ばししたという経緯もある。この石油業界が急速な新エネ車へのシフトに反発していた可能性は十分に考えられる。

中国石油閥のドンとして君臨していた周永康氏(写真中央)。汚職を理由に逮捕され、2014年に裁判にかけられた。白髪のまま出廷したその姿に、権力の座から引き落とされた悲哀がにじみ出ていた(写真提供:China Central Television via REUTERS TV/ロイター/アフロ)

 石油業界とつながっていたのが、中国共産党の最高指導部の一人で、国有石油大手・中国石油天然気集団の総経理も務めた周永康政治局常務委員だ。この「石油閥」の大物が当局に拘束され汚職問題で追及されていると中国国内で正式に報道されたのが2014年3月。「石油閥」の弱体化が決定的となった瞬間だった。

 

 これ以降、新エネ車の普及推進に関する重要文書が国務院より矢継ぎ早に発表された。例えば、2014年7月には『新エネルギー自動車の普及加速に関する指導意見』が発表され、新エネ車の普及に重点を置く方針が示された。2015年5月に発表された、今後10年間の製造業の発展を示した『中国製造2025』では、省エネ・新エネ車を重点分野の一つに指定し、「飛躍的発展を推進する」と明示した。同年10月には、『電気自動車用充電インフラの整備加速に関する指導的意見』も発表された。政府主導による新エネ車普及推進は急速に強まっていった。

中小メーカーは淘汰され、大手への集約が進む

 

 市場拡大の原動力である多額の補助金は永久的に出し続けることはできない。実際に、2016年比20%の減額が今年から実施されている。2019年からはさらに同40%減となり、2021年以降は廃止される計画である。補助金削減の影響により、2017年上期(1~6月)の新エネ車販売台数は前年同期比14.7%の伸びとなり、2016年の53.1%から鈍化した。

 ただし、補助金削減は負の影響ばかりではない。中国自動車工業協会によると、2016年における新エネ車生産は、一般向けの乗用車が66.7%、バスを中心とする商用車が33.3%と、化石燃料車を含む全自動車生産と比して、後者の比率が突出して高かった。これが、2017年上期には商用車比率が15.6%まで低下しており、補助金が招いた構造的歪みが是正されている。

 

 マーケットが成熟していく過程において、補助金目当てで参入した技術的に劣る中小メーカーは徐々に淘汰され、大手メーカーに集約されるであろう。一時横行した補助金詐取の防止にも資するとされる。

 

 また、補助金を使わない新エネ車の普及推進の動きもある。今後は、生産・輸入が一定規模以上の自動車メーカーに対し一定割合の新エネ車の販売を義務付ける予定だ。