中国の新エネルギー車(新エネ車)市場が急拡大している。中国自動車工業協会によると、中国の電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)の販売台数は、2016年に50.7万台に達した。その内訳はEVが8割、PHVが2割となっている。
国際エネルギー機関(IEA)の調査によると、新エネ車の累計販売台数は中国だけで世界全体の32%を占める。中国の自動車市場は2009年に米国を抜き世界最大となったが、新エネ車でも世界一に躍進した。
新エネ車急成長の背景にあるのが、生産・販売促進を目的とした政府による支援政策である。新エネ車の普及は、自動車の急増による大気汚染の深刻化や石油の海外依存度の高まりといった問題の緩和に資する。また、既存の乗用車市場における国内メーカーのブランド力は外資系メーカーに大きく劣るが、技術構造が大きく異なる新エネ車市場を新たに発展させることで、自国メーカーの台頭が期待できる。
実際の支援策では、中央政府の補助金に加え、各地方政府も独自の購入支援制度を設けてきた。北京や上海などの大都市では、渋滞や環境対策の名目でナンバープレート発給に数量規制が設けられているが、新エネ車には特別枠が設定されたことも普及を強く後押しした。このような、中央と地方両政府からの強力な支援政策によりマーケットが一気に拡大したのである。
2014年が「新エネ車元年」
中国政府が新エネ車の購入補助金を支給し始めたのは2010年であった。財政部、科学技術部などが共同で『個人による新エネルギー車購入に対する補助金試行開始に関する通知』を発表し、上海市や杭州市などの5都市を対象に購入補助金の支給を始めた。2012年に発表した『省エネルギー・新エネルギー自動車産業発展計画』では、新エネ車を2020年までに500万台普及させる目標を掲げ、本格的な普及支援が始まった。
しかしその後、新エネ車の普及はなかなか進まなかった。その一因として、「中国政府が次世代新エネルギー車の本命とするEVの販売停滞は、各地の地方政府の支援が広がらないことが原因(2012年08月31日付日本経済新聞朝刊)」との見方があった。事実、中央政府の補助金だけではガソリン車と比較してもかなり割高であったし、普及のカギを握る充電スタンドの設置も地方政府の後押しが不可欠だった。
転換点を迎えたのが2014年だ。「2014年には合計21の省や都市で、購入補助金政策が少なくとも70件打ち出された(2015年9月8日付日経産業新聞)」。これを機に中国国内における新エネ車の生産・販売が急増した(図1)。2014年、15年の2年連続で、EVとPHVを合わせた年間生産・販売台数は前年比3倍を超える急成長を遂げた。
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