radikoはリニューアルにあわせ「シェアラジオ」と呼ぶ付加機能を用意した。番組を聞いている際、シェアしたいと思ったところでボタンを押せば、自動でURLを作成。SNSなどを通じてそのURLを受け取った相手は、そのURLを選択すれば該当部分を聴くことができる。「いつでも好きなときに情報を得たい」「消費はSNSの口コミがきっかけ」。そんなネット上のコンテンツ消費文化に、ラジオ側から歩み寄る形だ。「番組制作力には自信があるが、配信方法がネックになってラジオの魅力を伝えきれていなかった」。新機能に対し、ラジオ局関係者からは期待の声が上がる。

新機能の追加により、ラジオ局がただちにスポンサーからプラスアルファの広告料をもらえるわけではない。それでも、ラジオに親しむ消費者が増えれば、ラジオの媒体としての価値は高まる。radikoはインターネットを通じたストリーミング配信サービスであるため、将来的には利用者の属性や好みに応じて流し分ける新型の音声広告(詳しくは「TBSラジオ『Podcast撤退』は復活の狼煙」を参照)の導入も視野に入ってくる。
radikoのサービス開始は2010年。表向きの目的は「高層ビルの増加で電波の受信環境が悪化するなか、代替手段を用意すること」にあった。実際にはラジオ受信機を持っていない消費者が増えるなか「自分の暮らす地域のラジオをネットで聴ける」という便利さに支持が集まり、現在では1日あたり約100万人が使うサービスに成長した。2014年には月額350円を支払えば、全国のラジオ局の番組を聴取できる有料サービスも始めた。
音楽聞き放題サービスも百花繚乱
音楽をデジタル機器でどう楽しむか──。CDプレーヤーから米アップルのiPodに至るまで、1980年代から2000年代までは「自分で選んで購入したコンテンツを持ち運ぶ」ことに主眼が置かれた。
最近ではAmazonやAppleが次々と音楽聴き放題サービスに参入。同じく音楽聞き放題サービスで世界大手のSpotify(スポティファイ、スウェーデン)も近く日本市場に参入する見通しだ。これら新型のサービスは、膨大な楽曲数のなかからプレイリストを自動作成する、言い換えれば「配信側が、好みの音楽を流してくれる」ことを目玉機能のひとつに挙げている。ネットサービスのコンテンツが、ラジオに近づいてきていると捉えることはできないだろうか。
商業施設でもオフィス街でも、イヤフォンを耳にして歩くひとを見かけない日はない。「耳の奪い合い」がいよいよ激しくなるなか、既存メディアの代表格といえるラジオが反転攻勢への狼煙を上げる。
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