経営者の期待の影響を強く受けざるを得ない立場

 日本企業でも任意のケースも含めて、指名委員会を設置する企業は増えている。だが、社長が社外取締役の任命に与える影響に関しては、まだ特に大きな議論にはなっていないようだ。おそらく、現状ではまず社外取締役の数を増やすことが優先課題と捉えられているからではないだろうか。

 このような過程で選ばれた日本企業の社外取締役は、どうしても就任当初は就任企業の事業内容の知識や組織固有の事情に関する情報に限界がある。そのため、経営者の役割期待のあり方が、社外取締役自身の役割認識や能力の発揮に影響を与える。経営者によっては、かなり明示的に社内の現場の情報や人材育成の基盤にまで関わっていくような期待を持ち、そのような情報開示をして社外取締役のコミットメントを求めるケースもあった。つまり、社外取締役は、就任の経緯に加えて取締役会の中でマイノリティーであるということから、経営者の期待の影響を強く受けざるを得ない立場にあるのだ。

社外取締役にかかる社内期待と外部圧力、日米の違い

 外部圧力と内部の期待という点で日米の社外取締役を大雑把に比較して見ると、下の図のようになる。日本の場合、外部圧力は強まりつつあるが、同時に内部(経営者)の期待に応える必要性も高い。一方、アメリカの場合は外部、特に機関投資家からの圧力は非常に強いが、内部(経営者)の期待に応える必要性はあまりない、といえるのではないか。このような文脈があるため、アメリカでは取締役会でCEOが唯一の内部者というような企業も出てくるのであろう。米国企業と比較すると、日本企業の社外取締役は異なる環境・文脈で異なる期待や圧力を受けながら役割を果たしている。

図1 社外取締役にかかる社内期待と外部圧力の日米の違い

社外取が株主の代わりにCEOを監視する米国

 日本では社長が役員任命に大きな権限を持ち、取締役会で多数を占める内部役員は、法的にはともかく実質的には社長の部下だ。そのような環境で、社外取締役が社長とどのような距離感を保つかは、彼らが得られる情報や活動できる範囲にも影響を与えかねない大事な要因である。一方、アメリカの企業では、社外取締役は株主のためにCEOの意思決定を監視するためにいるという前提があるため、その距離感にそれほど敏感になる必要性はないように思われる。日本ではよく社外取締役をどう「活用」するかという議論を目にする。だが、米国では取締役(特に社外取締役)の監視によって経営者・社長が活用されるというモデルがより近いかもしれない。

 日本企業の社外取締役は内部の期待や圧力に応える必要性が高いとはいえ、経営者の期待に一方通行に直面して彼らの役割を決定してしまっているわけでもない。社外取締役は、経営者の期待や想定はそれとして、他の役員と議論をしたり、他の利害関係者やメディアなど外部からの期待とプレッシャーも鋭敏に感じたりしながら仕事をしている。言い換えれば、社外取締役としての役割を自分自身の中で確立し、また納得するために、取締役会の内外で模索をしている姿がヒアリングから浮かび上がった。