
社外取締役の役割認識にかなり幅がある日本
社外あるいは社内に関わらず、取締役の責任は法律に定められている。また2015年に導入されたコーポレート・ガバナンス・コードでも、特に社外取締役の役割は、明確に示されている。
しかしながら、日本企業の社外取締役がもつ自らの役割の認識には多様性が大きいことを、以前、日経ビジネスオンラインで紹介した(2016年11月7日配信「日本で社外取締役は機能するのか」参照)。社外取締役の属性(たとえば弁護士、大学教授、他社の前経営者など)がその役割認識に大きな影響を与える傾向があることが、直接のヒアリングで確認できたことを報告したものだ。
今回はこのデータをさらに掘り下げて分析した結果、新たに見えてきたことをお伝えしたい。社外取締役の専門性の属性にかかわらず、役員就任時の過程や社長の期待などにより、その認識が大きく影響されることである。
米国では株主利益の最優先が社外取の役割
このような、社外取締役の自分自身の役割認識の多様性は、コーポレート・ガバナンス制度が確立された国では見られない現象だ。たとえば、日本でも比較的よく知られているアメリカのガバナンス制度を見ると、1970年代後半からの機関投資家の台頭などから、経営者は株主の利益を最大化するような戦略を選ぶべきで、社外役員を中心とした取締役会は、経営者がそのような意思決定をするように監督するのが役割である、という考えが強く受け入れられている。もちろん、株主といっても様々なタイプの投資家がおり、株主利益になる意思決定をすることは必ずしも単純なことではない。それでも株主利益をまず第一に念頭におくことを社外取締役は求められている。
それを反映してアメリカの上場企業の取締役会の過半数は独立社外取締役で占められており、さらに最近では、CEO(最高経営責任者)が唯一の取締役会の内部者である企業が増えている。たとえば米国の代表的企業が選ばれているSP500のうち、現在では約7割がCEOのみが内部役員であるという状況になっている。つまり、取締役会はほぼ社外取締役のみによって構成されているケースが増加しているということである。
このような動きには反対論もあるのだが(たとえば、社内のことをよく知らない役員ばかりで重要事項を議論する弊害や、内部事情に詳しいCEOの影響力を逆に高める、など)、機関投資家の意向を受けた動きとして支持する声も多い。日本の報道で米国企業では半数以上が社外というものを目にすることがあるが、実際はさらに先に進んでいる。
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