日経ビジネスが若者の消費の実態に迫った9月11日号の特集「若者消費のウソ」。本特集と、それに連動した日経ビジネスオンラインの連載で集中的に取り上げたのが、9月4日に活動を無期限で休止すると発表したユーチューバーのヒカル氏だ。特集に関連して2度にわたって実施したインタビューは、『ユーチューバー、ヒカル「炎上」の錬金術』で詳報した。
活動休止の直接のきっかけとなったのは、個人が発行する仮想株式を売買できるインターネットサービス「VALU」をめぐる騒動だ。今回、彼が所属していたインフルエンサー専門のプロダクション、VAZ(東京都渋谷区)の森泰輝社長が日経ビジネスの取材に応じ、その経緯と現状について説明した。ネット時代の新たなカリスマになりつつあった男は、なぜ表舞台から姿を消したのか。
ヒカル氏と、VALUを巡る騒動、活動休止の詳細はこれまでの関連記事を参照いただきたい(関連記事:個人価値売買VALUが物議 「革新」と「詐欺」の境界線/ユーチューバー、ヒカル「炎上」の錬金術)。9月4日にヒカル氏が活動休止を発表してからも、ネット上には様々な意見が飛び交う一方、ユーチューブでの彼のフォロワーは今でも200万人超(9月15日現在)。その影響力の大きさを物語る。

VAZは2015年に設立されたインフルエンサー専門のプロダクションとして、ヒカル氏をはじめ多くの人気ユーチューバーが所属している。企業がユーチューバーを起用して新商品などをPRする際に、その人選やPR手法などのサポートやコンサルティングを担い、通信会社や化粧品メーカーなど大手のクライアントも多数抱えている。また、株主としてソニー・ミュージックエンタテインメントやホリプロなどが出資している。
インフルエンサーの影響力が増し、その人数も急速に増える中、こうした専門プロダクションの存在は大きな注目を集めていた。インフルエンサーの活用ノウハウに乏しい企業側にとっては、若者の消費を掘り起こす上で心強い味方であったのは確か。一方で、マネジメントのあり方を含め、業界のルールが未整備であるという課題も存在していた。
今回のヒカル氏の活動休止騒動は、その課題がはらむ問題点が最も大きな形で露呈した格好だ。8月中旬にヒカル氏が自身の仮想株式の価格を上昇させた上で放出し、関係者が事前に売り抜けて数千万円の利益を得ていたことが発覚。ヒカル氏本人だけでなく、マネジメントを担っていたVAZにも批判が集中した。
ヒカル氏らVAZ所属のユーチューバー数人は、この事態を受けて予定していた商業施設やファッション関連のイベントへの出演をキャンセルするなど、事業面でも影響が出た。さらに、VALUの運営会社VALU(東京都渋谷区)は、損失を被った利用者への損害賠償などを勧告する通知書を8月下旬にVAZに対して送付。現在、2社の代理人の間で交渉が進められている。
こうした一連の問題について、VAZの森社長はどのように答えるのか。
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