一方であきんどスシローは、都心向けの実験店として2015年にオープンした「ツマミグイ」「七海の幸 鮨陽」を、今年6月までにひっそりと閉店している。

 水留社長は「30、50店という規模に広げられないと思った」と話す。これらの店には、レーンがない。注文に応じて職人が握り、お客に提供するテーブルサービスの店だ。創作ずしやすし以外のサイドメニューを充実させ、スシローとは全く違うコンセプトをうたっていた。ただ、こうした店舗を運営するには、相対的に広いキッチンスペースが必要になり、客席を多く取って回転率を高めるような運営形態は困難だった。多店舗展開していくのに欠かせない、すし職人の確保もなかなか難しいと判断したようだ。ただし、テーブルサービス型の店舗開発をあきらめたわけではなく、「食材の外部加工を一部に採用するなど、狭いキッチンでも効率的に運営できる店舗のあり方を検討中」(水留社長)だという。

ポイント機能が今秋にも全店で導入

あきんどスシローの水留浩一社長兼CEO(最高経営責任者)
あきんどスシローの水留浩一社長兼CEO(最高経営責任者)

 外食業界では、ここ数年続いていた値上げの反動による客数減の影響などもあり、低価格商品を投入して客足の回復に力を入れる企業が目立つ。ただ、「回転ずしについては決してダウントレンドではない」「スシローは客単価も下がっておらず、追い風の状況」と水留社長。

 同社は、今年度、ハマチやタイなどの皮引きを店内で行うなど鮮度にこだわった商品に力を入れてきた。また、大きめのサイズのウナギやトロなど目玉商品が好評を博し、今夏は客数が特に好調だという。業績は非開示だが、今年5月に、2015年10月~16年3月期の実績について、「売上高は700億円超で前年同期比8%増」「過去最高の営業利益」「既存店売上高は前年比0.1%増」と発表済みで、通期でもこの傾向が継続しているようだ。

 確かに100円ずしは週末には入店を待つ家族連れでごったがえす盛況ぶり。だからこそ、顧客満足度を向上させながら、業務効率化を進める工夫が欠かせない。

 スシローでは、来店予約などができるアプリを自社で開発している。今秋からは、アプリ上にポイント機能を導入する予定だ。全店共通で貯められる仕組みで、リピート率の向上につなげる。また、「(値引きのような)経済的なメリットではなく、ヘビーユーザーが喜んでくれるようなサービスを検討中」(水留社長)。いち早く新商品の試食ができる顧客参加型のイベントなど、アイデアは色々あるという。

 あきんどスシローは2009年に上場廃止となり、現在はプライベートエクイティファンドである英ペルミラの下で、経営改革を続けている。来年にも再上場する見通しとされ、市場に対して、着実な成長をアピールする必要もある。

 都心は確かに同社にとって“未開の地”ではあるが、一方で、外食企業がしのぎを削る主戦場。まずは南池袋店をいかに成功させるか。その結果が、郊外型に次ぐ柱を育てられるかの試金石となる。