「ヒラリー嫌い」「トランプ嫌い」ともに6割の“大接戦”

 クリントン氏が勢いを落としている理由の一つは、いまだに尾を引く国務長官時代の私用メールサーバー問題だ。

 米連邦捜査局(FBI)のジェームズ・コーミー長官が司法省に刑事訴追は勧告しないと述べたこともあり、私用メール問題ではクリントン氏の不起訴が確定している。だが、長官が会見で「極めて不適切」と指弾するなど、リーダーとしての姿勢や彼女の秘密主義に疑義を呈する向きは多い。今後、クリントン氏が削除し、FBIが復元した約1万5000通の電子メールがさらに公開される可能性もある。そうなれば一層の打撃が予想される。

 また、クリントン財団を巡る寄付金疑惑もクリントン氏の選挙戦に影を落としている。

 クリントン元大統領夫妻が財団を通じて外国政府や企業から巨額の資金を集めたとされる疑惑で、国務長官1年目のクリントン氏と面会した外部関係者の半数以上が財団への献金者だったと報じられている。海外の外交当局者など公務での面会が含まれていないため誇張されているという指摘もあるが、国務長官という立場を利用して献金を求めていた事実が明らかになれば、大統領選どころの騒ぎではない。

 実際、クリントン氏に対する有権者の評価は落ちる一方だ。

 8月下旬に実施されたワシントン・ポストとABCテレビの世論調査によれば、クリントン氏を「好き」と答えた有権者が39%だったのに対して「嫌い」は59%に達した。一方でトランプ氏は「好き」が37%で「嫌い」は60%だった。

 トランプ氏の方が嫌われているが、クリントン氏もほとんど変わらない。「どちらにも投票したくない」という声が上がるように、今回の大統領選はいわば嫌われ者同氏の戦い。トランプ氏が失言や放言でミスを重ねているのにいまだ接戦というところに、クリントン氏の不人気ぶりが見て取れる。

 クリントン氏の体調悪化を受けて、トランプ氏は「『イスラム国』と戦うには精神的にも体力的にもスタミナ不足」と攻撃した。クリントン陣営は健康状態について詳細を開示すると述べており、その結果次第だが、トランプ氏が指摘するように米大統領があらゆる面でタフな仕事なのは確か。大統領選の最終コーナーを目前にして浮上したクリントン氏の健康問題――。本命候補は最大の試練に直面している。