進研ゼミの国内会員数は、2012年4月末時点の409万人をピークに、2016年4月末時点では243万人へと激減している。2014年7月に発覚した顧客情報流出事件の影響が極めて大きいが、本質的な問題は多様化する顧客ニーズに対応できていないことだ。

 原田氏は、2017年3月期に3期連続の減収減益になる見通しとなった責任を取る形で退任した。今年5月の退任会見で原田氏は、「ロードマップは明確になっている」と述べたが、極めて厳しい状況が続いている。2016年4~6月期には、上場来初の営業赤字に転落。進研ゼミや英語教育ベルリッツの赤字を、業績好調な介護事業などで穴埋めすることができなかった。

原田改革、構想が大き過ぎて現場置き去り

 原田氏は2014年の社長就任当初、デジタル化への対応の遅れや多様化する顧客ニーズへの不十分な対応などを課題として挙げ、事業構造改革にまい進する方針を示した。同時期に顧客情報流出が発覚しても、その大きな方針は変えることはなく、むしろ、大規模な顧客情報流出の背景にあるDM(ダイレクトメール)による営業に過度に依存する体質から抜け出そうと、新たな事業モデルへの転換を急いだ。

 例えば、デジタル教材では、ベネッセが独自に開発してきた専用タブレット端末ではなく、汎用的な「iPad」の活用を重視する方針に転換。教材の制作体制でもデジタル化を急いだ。一方、DM依存体質からの脱却を目指し、ベネッセ社員が直接、教材の良さを説明したり相談に乗ったりする営業拠点「エリアベネッセ」を、全国に500カ所に展開する方針を打ち出した。「赤ペン先生」による添削で培った顧客に寄り添う「ハイタッチ」な事業を進化させようと、ベネッセの教材を活用する塾をフランチャイズ方式で全国に広げる「クラスベネッセ」事業も開始。地域の顧客を実店舗網で囲い込む「ベネッセタウン構想」を進めようとした。

 だが、その原田氏の改革は、現場を置き去りにした。「大きな構想から入って、改革を急ぎ過ぎた。現場のスピード感と合わなかった」と安達氏は振り返る。