なぜ25日に記者会見をしたのか、という問いへの答えは端的に言うと何でしょうか。

前川:それは、各メディアから求められたから、です。まず、NHKに頼まれました。数週間前に自宅前で応じたインタビューが放映されていなかったので、記者さんに「どうするのか」と聞きました(編集部注:その映像は未だにオンエアされていない)。

 すると、「記者会見をしてくれないと、NHKは今まで取材したことを出せない。記者会見があれば、それはどこのメディアも報じるので、NHKもニュースにすることができる。だから記者会見をしてください」と言ってきました。

 もう一つは、ちょっと話題になっている東京新聞記者の望月衣塑子さんからメディアを代表して頼まれた、ということもあります。

詩織さんのほうがよほど勇気がある

前川:読売新聞の記事が出た22日の夜あたりから、私の自宅前にメディアが殺到している状態になってしまっていました。ですが、その時点で私はもう自宅を抜け出して、ホテル住まいをしていたのです。本当にもぬけの殻で、私は父親と一緒に住んでいるんだけれど、父親もホテルに行くと言って、誰もいない状態でした。

 誰もいない家の前で各社がずっとこのまま待ちぼうけを食わされるのはたまらないということで、望月さんが私の自宅前にいる各社の合意を形成し、代表して(元文部省官僚で京都造形芸術大学教授の)寺脇研さんに電話をかけ、「前川さんに記者会見をするように伝えてくれ。メディアの総意である」と言ってきたのです。

 寺脇さんが私にそれを伝えてきたのが24日の朝だったと思います。翌25日というのは、私が取材に応じた「週刊文春」の発売日です。これに合わせて、25日の朝日新聞朝刊に私のコメントが載ることも、それから25日夜にTBSの「ニュース23」でインタビューが放映されることも決まっていました。それらが一斉に出るので、同じ日に記者会見もしましょう、ということがバタバタと決まっていったというのが実情です。

 だから、何か勇気を出して発言したとか言われているけれど、私は大して勇気を出していない。

 レイプ被害に遭った詩織さんという方が、官邸につながる警察の幹部を顔を出して告発されていますが、彼女の方が私よりも100万倍、勇気があると思います。私が現職中に加計問題を告発したとしても、それよりもよほど勇気がいることだと思いますし、彼女が問題提起をした権力の闇の方がずっと根深い気がします。

一方で、NHKや読売新聞について、今、何を思いますか?

前川:残念に思う半面、現場の記者さんにはシンパシーも感じるんです。要するに、大きな組織の中では、組織の論理で動かざるを得ないという。自分に重ね、ちょっと、同情したところもあるんです。みんな、組織の中で四苦八苦しながら生きているんだなと。

 読売新聞の社会部長も、心の底から、あの解説を書いたのかどうかは分かりません。組織の中で仕事をしている以上、しょうがないというところもあると思うんです。私だって、心にもないことを国会で答弁したことはありますから。

 誰だって多かれ少なかれ、「面従腹背」で生きているわけです。ただ、面従腹背しているほうが、まだマシだと思います。

 身も心も組織にささげるというか、空っぽになって、言われるがままに動く。心を失ったロボットみたいになってしまっているような、そういう人も結構いますから。だから、それよりは、本当はそうじゃないと思い、苦しみながらも、苦しみを押し殺して仕事をしているような人のほうがいいな、と思います。

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