香港の議会に相当する立法会(定数70)の議員選挙が9月4日に現地で実施された。4年に一度行われる選挙で、選挙制度の民主化を求めた2014年の大規模デモ「雨傘革命」以後、初めての立法会選挙となる。

 投票率(速報値)は58%で、前回(2012年)に比べて約5ポイントも上昇。1997年に香港が中国へ返還されて以降で最高の投票率となった。

 選挙の注目点は主に2つ。中国本土の中央政府と距離を置く立場の「民主派」が議会の3分の1(24議席)以上の議席を維持できるかと、新興勢力である反中派がどれだけ議席を確保できるかにあった。

雨傘革命を率いた学生が主体となった新政党「香港衆志(デモシスト)」が送り出した候補者が当選(写真:AP/アフロ)
雨傘革命を率いた学生が主体となった新政党「香港衆志(デモシスト)」が送り出した候補者が当選(写真:AP/アフロ)

民主派と本土派、70議席中30議席を確保

 結果、いわゆる旧来型の民主派は前回の27議席から3つ減らして24議席となったものの、独立志向を含む新興勢力が6議席を獲得し、民主派と合わせて30議席とした。課題であった3分の1以上の議席を維持した。一方、中国中央政府の考え方に近い「親中派」は、43議席から40議席に減らしたことになる。

 雨傘革命で指導者の1人だった羅冠聡(ネイサン・ロー)氏は、史上最年少の23歳という若さで初当選を果たした。羅氏は雨傘運動に参加した若者らが今年に入って結党した新党「香港衆志(デモシスト)」の党首だ。

 さらに注目すべきは、「香港は中国の一部ではなく、自分たちの『本土』だ」と主張する本土派の躍進だ。本土派は中国からの独立志向が強く、中国中央政府からすれば危険視すべき存在だ。

 今回の選挙で、本土派の新党「青年新政」からは2人、同じく本土派の「熱血公民」から1人が初当選した。本土派の支持層は若者が中心。現政府への若者の不満が議席獲得につながったと考えられる。

 香港立法会の選挙制度は少し複雑で、住民が立候補者に投票して選べるのは定数の半数に当たる35人。残る35人は産業界で業界別の間接選挙による職能代表枠が30人、残る5枠は区議会議員の候補者が投票で選ぶ。特に産業界から選ばれる30人の枠は中国本土とビジネスで関わる人が多く、親中派が多いとされる。

 最初から民主派が過半数を取りづらい仕組みであるものの、その中でどれだけ民主派が議席を確保できるかがポイントだ。

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